第15話

シュリ案内の元エルフの集落を始めた渡辺はある異変に気付く。


──ん?この森……半分枯れてないか?


集落に入ってきた時は気づかなかったが入口からみて左側の森が枯れ始めてきているのだ。


「ねぇねぇ。ここ。なんで枯れてるの?」


僕は何気ない質問のつもりでシュリに聞いたのだがシュリはバツの悪そうな顔をしてこう言った。


「──族長様がお話してくれるはずなので私の口からは申し上げられません。」


と。今までは僕の事を尊敬の眼差しで見ていた彼女だったのだが、突如その感情を仕舞い込みまるで僕を拒絶するような言い方に変化した。


訳ありか……まぁ僕が用心棒として来た意味もこれかも知れないし詮索はしないでおくか。


そんなこんなしていると先程族長宅の外にいたエルフが僕達を呼びに来てくれたみたいだ。


先程はあまりジロジロ見なかったので分からなかったが恐ろしい程の美貌を持った女性だ。エルフは容姿端麗と言われているがその中でも飛び抜けて美しい。髪はシルクのように繊細で風に靡きキラキラと煌めいている。


「はぁはぁ……シュリ……渡辺様……遅くなってすみません。族長がお会いになるそうです。こちらへどうぞ……ゴホッゴホッ」


急いで走ったせいで噎せてるよ。森の住民たるエルフが噎せるほど走るってどんだけだよ。と思い苦笑いを浮かべた渡辺は彼女の案内でシュリと共に族長宅へと足を運んだ。


「お客人。お待たせ致しました。こちらで族長がお待ちです。」


族長宅の中に足を踏み入れると中央の巨木が外から見るよりも荘厳に聳え立っていた。その巨木の中央に鎮座する人物。それが族長であることは明白。


「かっかっか。ワシはエルフ族長のイメルといいますじゃ。この度は我々の集落に起こしいただいて感謝致しますじゃ。」


「僕は渡辺と申します。シュリさんに用心棒の話を聞いてやって来ました。もしかしてあの枯れた森が原因なのですか?」


「うむうむ。そうなのですじゃ。申し上げにくいのじゃが……あの枯れた森に変えたのは、この集落に元々いたはぐれエルフが関係しているのでは無いか?との見立てなのじゃ。」


「はぐれエルフ?」


「はいなのですじゃ。このエルフの里には先祖代々族長に受け継がれた宝があったのじゃが……1人のエルフが盗み出しこの集落を去ったのですじゃ。そしてその宝には盗んだ者に呪いがかかるようになっていたのじゃが……その呪いは人間用に作られた物だったのですじゃ。宝を盗んだエルフには効果が薄く、しかし徐々に体を蝕んでいき……今や体に取り込まれた呪いが体を変形させ異形の化け物と化しているのですじゃ。」


「その呪いとなんの関係があるのですか?」


「その者がまだ自我がある時この集落に戻って来たのじゃが……その時には既に宝は体に取り込まれ異形化してしまっていて手遅れだったのですじゃ。我々は困り果て……村の総意で西の森にあったワシの別宅へ彼を送致する事になったのじゃ。そしてそれから音沙汰も無く数日が経過したある日。森が突然枯れ始めたのですじゃ。我々としてもこの異常事態に即座に別宅へむかったのじゃが……そこは既に魔物の巣窟と化してしまい最早我々の手には負えぬ事態に……自業自得だとは重々承知しておりますじゃ。渡辺様。どうかお願いしますじゃ。どうか……どうか……我々を助けて頂けませんじゃろうか……」


「あーー。うん。別に良いよ?とりあえず確認だけど……魔物達を一掃してくれば良いんだよね?」


「は、はいですじゃ!魔物達がいなくなれば我々が枯れた森の調査などに入ることが出来ますじゃ!」


「じゃあ受けるよ。別にしたい事がある訳じゃないし。暇だから。」


「おお……有難い……ありがとうございますじゃ……ありがとうございますじゃ……」


族長イメルは両手を胸の前で合わせ神に拝むように擦り合わせていた。


「じゃ。僕早速行ってくるね。」


「ええっ!?も、もうですか?」


シュリも驚いて声を上げる。


でもさ?ここで論議してる間にも魔物達増えるかもだよね?エルフって危機感少ないのかな?まぁいいや。僕は僕の仕事をするだけだ。


「じゃ。いってきまーす。」


「あ!わ、私もついて行きます!」シュリだ。


「良いけど……危ないよ?」


「分かってます。これでもエルフ一の狩人です。弓で援護させていただきます!」


「うーん。まぁいっか。じゃあ行こっか。」


「はい!」


「渡辺様……よろしくお願いしますじゃ……」


「はいはーい。じゃあね。」


僕は枯れた森へと足を向けた。

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神様。転生先が龍の卵ってどういう事ですか? たまごちゃん @tama-gon0310

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