第14話 エルフの集落にて

エルフの集落は木の上で生活する妖精族とエルフ達の生活に溶け込んだ精霊達。そして木材で作った簡易住宅で生活するエルフの3パターンが共存する空間だった。


中でも精霊達は焚き火には火の精霊、川には水の精霊と言った風にエルフの生活を手助けする形で共存していた。普段我々の生活の場面にも見えない精霊達が助力してくれているそうで子供たちには稀に見えたりするらしい。「小人が見えた!」などの目撃情報は大体が精霊らしいのだ。


僕はシュリに連れられて集落の奥の方へと進んで行った。流石に集落の中をドラゴンが歩くのは問題があるので、人型に変幻していた。住民達の目は冷たいものだったがシュリのお陰ですんなりとエルフの族長の住宅へ辿り着いた。


族長の住宅は樹齢何年だよ……と言いたくなるほどの巨木が中央から伸びていて屋根を突き破っている様に見える。だが無論住宅作ったのは後付けで《我々は植物と共にある。》と言った意味合いが込められているそうだ。しかし間違いなく生活する上では中央の木が邪魔なはずである。それでも植物と住居を一緒に出来るのは族長のみの権限らしく栄誉なことみたいだった。


「大きな家だねぇ。」


それが僕の純粋な感想だった。


「渡辺様。我々の族長はこの中におられます。特に決まった礼儀などがある訳ではございませんが……渡辺様がドラゴンである故、好奇な視線を浴びせられてしまうやも知れません。私も注意しますがくれぐれも癇癪を起こさないようにお願いします。」


「うん。大丈夫だよ。そんな小さな事じゃ怒んないから。」


本当かよ。と思ったシュリだったが決して口には出さなかった。シュリの視線を感じた渡辺は《ん?》とシュリを見つめたが「いえいえ!なんでもありません」と狼狽えていた。


コンコン


族長宅の木製の扉をノックした。


「はい。誰ですか?」


「シュリにございます。」


「まぁ。それでは用心棒の方が見えられているのですか?」


「はい。今族長様はご在宅ですか?」


「はい。ですが少しお待ちいただけますか?準備がございますので。」


「分かりました。では半刻後にまた参ります。」


「渡辺様…少し暇になっちゃいましたね。では我々の集落をご案内しますね?」


「うん。よろしく。」


僕はシュリ案内の元エルフの集落を散策するのだった。

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