第13話 エルフの集落へ

エルフの集落へ行くことになった渡辺は現在ドラゴン姿のままである。何故ドラゴンの姿のまま集落を目指しているのかと言うと、エルフの集落周辺は警戒心が高く警備の者も多い。集落までは遠く、道のりの途中で変身が解ける可能性があり、途中でバレるよりも初めから危なくないドラゴンという認識をしてもらった方が良いからだ。エルフは妖精や精霊と共に暮らす種族らしく善悪の区別を種族でする訳では無いそうだ。


森で助けたエルフの女性シュリは集落から依頼されて人間が住む世界へと足を運んだ途中に襲われた。そしてその依頼と言うのが《用心棒》を雇う事だった。


渡辺は道すがらそれを聞いた時ドラゴンって用心棒として最強じゃね?と思い自ら名乗りを上げたのだ。


そうじゃなきゃドラゴンの姿のままエルフの集落に行くなどただの自殺行為だ。


どこかから声が聞こえてくる。


──ここは神聖な場所。立ち去れ──


──立ち去らぬと言うのなら……神々の天罰を与える──


頭の中に直接響いてくるような声だ。グワングワンと頭を鳴らす。


「私だ。シュリ・リキアニートだ。この方は私が探した用心棒となって下さるお方。無礼は許さん。引け!」


周囲がざわめき始める。


「えっ!?ドラゴンが用心棒?まじやべぇよ。食われちゃうって!」


「うっわ!顔が人じゃん!怖!キモ!」


「ドラゴンって言う割にちっちゃくね?臭そうだし。」


うん。色々傷つくね。ブレス吐いていいかな?良いよね?


「渡辺様。すみません。エルフは私の言いつけを守るのですが妖精や精霊には効力が無いのです。口が悪い奴らですが許してやってくださいませんか?」


「そ、そ、そうなんだ?あはははは…危うくブレス吐いちゃおうかな?って思っちゃったよ(笑)」


「申し訳ございません!!どうかお気を鎮めください!集落に着いたら渡辺様の歓迎会を開きたいと思っておりますので……何卒……何卒……」


シュリは顔を青くすると僕の方に向き直って土下座までして謝罪した。そこまでされると流石に怒る訳にはいかず妖精たちの悪口をスルーする事にした。


でもちょっとイラッとくるよね。だってずっと悪口言ってるんだよ?ホント嫌になっちゃうよ。でもね。実は歓迎会ちょっと楽しみなんだよね。村の人間とはあまり仲良くなれなかったけどエルフとかなら仲良くなれるんじゃないかなー?ってちょっと安易だけど思ったんだよね。


「ここがエルフの集落なの?」


たどり着いたのは細い木が幾重にも絡まりあった行き止まり。そこで僕達は止まったのだ。


「はい。ここです。では入りましょう。」


シュリは手を木に翳した。すると木が避けるようにアーチを成して人1人が入れる程の穴が空いた。


こりゃ見つからないわけだよ。中には人の気配も無い。そしてただの木の行き止まり。そしてこの森は精霊達の影響で方向感覚を失うらしいのだ。エルフとそれに準ずる者しか入ることが出来ない秘密の集落が目の前に広がった。

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