第12話 エルフとの出会い

えっ……ここ何処?


僕は目を覚まし目を開けると視界を何かで遮られ手足を縛られてどこかに転がされているようだ。


と突然。腹部に蹴られたような感触が。全くダメージは無いけど。


「おい。ようやく起きたか。」


「……はい。えっと誰ですか?」


「ふん。答える義理はねぇ。」


「そうですか。それで御用は?」


「貴様に聞きたい。」


「遠回しですねぇ。何を聞きたいのです?」


「てめぇ何もんだ?」


ハッ!?バレてるのか?いや……何者と聞いていると言う事はバレてないんだろう。


「何者でも無いですよ?ただの旅人です。」


「嘘つけ!嘘を。貴様どこでその服を拾った!」


「え?……なんの事やら……」


「貴様が着ている服はレイシル家の紋が入った服。レイシル様を襲った輩なのか!答えろ!」


ああ……そういうことか。この人前の街の領主の知り合いなんだ。なんて言い訳しようか……


「それはですね……拾ったんです。」


「苦し紛れの言い訳だな。レイシル様の仇だ。死んで詫びてもらおうか。」


シャキン……


剣を抜いた音だ。僕の首を切ろうとしているのだろう。


「じゃあな。ふんっ!」


ガキィィィーーーン


「!?な、な、なな、どういう事だ!?」


ははは。やっぱこうなるよね。だってドラゴンだもの。


あ!やべぇ。あと何分変幻自在が保てるのか確認できねぇ……


「あ、あのぉ……僕はどのくらい意識を失ってましたか?」


「……あぁ?5分位だな。それにしてもなんで切れねぇんだ?この剣がポンコツなのか?よし。別の剣を借りてくる。こっから動くんじゃねぇぞ?待ってろよ!」


「はいはい。分かりましたよ。」


タッタッタッタッ


さて。彼は走り去っていったようだ。


もう捕まった振りするのも疲れたな。ふんっ!手足を縛っていたロープは引きちぎった。そして目隠しを取ると周囲の状況を知った。


ここはどこかの遺跡の中だろう。風化した建物だ。誰も住んでないことは間違いない。所々ヒビが入りドラゴンが暴れたら直ぐに崩壊するだろう。あぁこれはどの建物でも同じか。ははは。


さて。どうしようか。僕は考えた結果1度変幻自在を解いて変幻し直しておく事にした。そして彼が帰ってくるのを待った。


しかしいつまで経っても帰ってこない。しびれを切らせて僕は建物の外へ向かう。朽ちた階段を上りおんぼろの木の扉をギィと開く。


ん?ここはどこだ?突然森の中に出た。あの村から少し離れているようだ。


やはり遺跡だったようだな。見た目は小さな祠みたいだ。


そして……


「きゃーーーーーー」


え?女の子を助けるイベント来た?キターーーー!


よっしゃいっちょやってやっか!


声のする方に一直線で全力で向かった。それがまたやらかす原因だ。自分の能力を過小評価し過ぎなのだ。


木々を薙ぎ倒し、魔物を粉砕し、声の方へ向かう。


森の中でも少し開けた場所に女性は居た。ピンク色のツインテールが可愛らしい10代前半で麻色のワンピースを着ていた。そして背中には弓矢が見えたので狩人かアーチャーと言った職業なのだろうと推察した。そして彼女の周囲には魔物では無く盗賊崩れのような輩が4人居た。もしかしたら冒険者のチームなのかもしれないが決して素行が良さそうな人達ではない。なんせ女性を襲っているのだから。


「へっへっへ。大人しくしてれば天国に連れてってやるぜぇ?」


「あにきぃー!あっしにも味あわせてくだせぇよ?」


「わーかってる!俺が散々犯した後ならな?」


「やったぁ!エルフを抱けるなんて夢だったんすよぉ!」


下衆い2人が女性に迫る。


僕は近くにあった小石を拾い《あにき》と呼ばれていた筋骨隆々の無精髭オヤジに投げつけた。


パァン!


刹那、《あにき》の胴体は巨大な穴が空いた。そして口から吐血すると白目を剥き膝から崩れ落ちた。


「あ、あにきぃ!誰だ!?」


「僕ですけど?」


僕の体は既にドラゴンに戻っていた。人面ドラゴン。それが僕の素であり、本性だ。


「ぎゃーーーーー!ド、ド、ド……ドラゴンだ!しかもフレア種……」


「「「逃げろーーーー」」」


あにきと呼ばれていた男以外は一目散に逃げ出した。そして女性も同じような反応かと思ったが……。


「あ、危ないところを助けて頂きありがとうございました!」


と以外にも丁寧に挨拶されました。異世界転生して初めて本性で挨拶されて凄く嬉しくて思わずブレスが出そうになりました。てへ。


「いえいえ。困った時はお互い様ですよ。……というか僕の事が怖くないんですか?」


「……あはは……正直に言えば恐ろしいですが私を助けて下さった貴方様に恐怖を感じるよりも感謝の気持ちの方が大きいのです。それに…我々エルフは精霊と生きる者であり、魔物であっても意思疎通ができる者と仲良くしたと国に伝えられる伝記もあるのです。」


「へぇ~そうなんだ?僕、渡辺って言うんだけどさ?人と仲良くするのって難しいね。こうやって変化してみるんだけど直ぐにバレちゃうの。」


「…す、すごい…人になってます……。あ。でも魔力がドラゴンのままですね。それじゃあ鑑定されたら一瞬でバレてしまいます。変装するなら魔力を人用に変換する技術も必要なのですよ。こういう風に。」


あらま!僕もさっきまでエルフって言ってたけどおかしいなーって思ってたんだよね。だって耳尖ってなかったんだもん。偽装してたって事ね。魔力の色と言ったらいいのだろうか?エルフの彼女が纏っていた青いオーラのような物が今は緑に変化している。これが魔力を変換するって事なのか。


「んー……こんな感じかな?」


僕の魔力を可視化出来るようにする。そして周りにあった金色のオーラを青色に変化させようとするが…失敗する。


「難しいね。これ。」


「そうですね。そんなに簡単では無いですが宜しければ助けてもらったお礼も兼ねて私が教えましょうか?」


「え?いいの!?やったぁ!!」


「ふふふ。そんな子供みたいに喜んで……可愛らしいですわね。では…ここではなんですから私共の集落へご案内差し上げますね。」


こうして僕はエルフの里へ行くこととなったのだった。

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