たとえ明日、月が地球に衝突したとしても少女たちは走り続ける

この小説を読み終えたとき、心地よい読後感とともにさてこの魅力を伝えるにはどんな言葉を使えばいいのだろうとしばらく考え込んでしまいました。

文章はきれいだし、プロットも美しい。進めば進むほど加速度的に面白くなっていくストーリー。
でも、一番いいのはそういうところじゃない。
そう遠くない日、月が落ちてくるという世界を流れている空気が素晴らしい。
その空気を吸う少女たちの息遣いが素晴らしい。

私たちの生きている世界は日常と非日常がとても曖昧になっています。
そして、それでもみんな生きている事実を私たちは知っています。

避難所で見上げる体育館の大きな照明。
時が止まったかのように人の消えた繁華街。

この小説を読んでいるときそういった光景が瞼の裏に蘇りました。
世界は美しい。そこに生きる人々もまた美しい。
それを思い出させてくれる小説です。

作者様の創作活動がこれからも実りあるものになりますように。