人を牢獄に入れたら悪人になる。悪人を善人で囲ったら?

羊草

第1話

人の中でも悪いことをしたら牢獄に入れられる。


そんな人を人は悪人と言う。


悪いことにはいろいろ含まれるだろう。


しかし、悪の反対は善。


ならば、悪を善で囲えばどうなるのだろうか。


答えは、解らない。


十人十色と言うように人の在り方は様々だ。


だが、十人の中の一色はこんな未来があっても良いのではないだろうか。


善人の島と一人の少年の話をしよう。






ある国に一人の少年がいた。

少年には荒くれ者の父と病弱な母がいた。

少年が青年になるよりも前に病弱な母は亡くなった。

青年は優しい母が大好きだった。

母が亡くなる前、父はギャンブルや酒浸りになり、挙げ句のはてに母や少年に暴力を振るうようになった。

優しい母は少年を庇うことが多々あった。

少年は力がなく、弱く、父に立ち向かうことも出来なかった。

母はもともと病弱であり、日に日に衰弱していった。

少年はそんな母をみるのが辛く、父に挑む力をつけたかった。

父が外に出る期間が長い日が度々増え、その時間、少年は鍛練を積んだ。

父がある日、帰って来なくなったことを少年は喜んだ。

鍛練は習慣化しているため続けるようだ。

安心したのも束の間、母は父が帰ってこないのを悲しんだ。

母はダメな父を更正させようとしていた。

母は自分が成し遂げてあげたかったと涙を流しながら、最後に目蓋を閉じたまま空にたびだってしまった。

父は母が亡くなった半年後に急に戻ってきた。

母が亡くなったことを伝えると父は青年になりきれていない少年にその期間は浮気をしていたことを更々と嘲笑うかのように言った。

少年は許せなかった。

その後は朦朧としていて、我に帰った時には父は血を流して死んでいた。


少年の国では人殺しは厳しい罰が与えられる。

だが、少年の国で少年のように幼いものが人を殺した例はなかった。

老主にことの顛末を話した少年は罰として国から追放しある島に行くことを言い渡された。


島についたら、少年の話を聞いてくれた老主が付き添っていた。

島は老主の故郷で少年は老主とその家族に迎えられた。

少年は戸惑った。

少年は少年の国で最も悪いとされていることをしていた。

しかし、罰と言われたことが未だに理解できていなかった。

老主の家族は少年に優しく、暴力なんて振るわない。

しかし、少年は母の優しさ以外の優しさに触れたのは初めてで、居心地が悪かった。

母が亡くなった後に自分だけが優しい世界にいるようで取り残された気分になった。

そんな少年はあの老主と彼の家族が話を聞いて、少年にはいつも微笑んでいる。

少年が青年になる頃、少しずつこの島の人間になれていた。

最初は老主、次に家族、近隣のものへと心を開いていった。

ある日老主は語った。

母はこの島、出身であると。

この島の者はみんな遠縁でも血の繋がりがあり、家族であると。

だから、青年も本当に家族なのだと。

老主は青年が少年の時に話した。

その時に母の死を知り哀しんだ。

青年は最初から家族である。と、心から思われていた。

青年は母を懐かしむようになった。

母の故郷で青年が暮らし、母の話を聞き、母が不幸ばかりでないことを知った。

母の優しさはこの島で育てられたのだと嬉しくなった。

青年は母の暗いところばかりに目がいっていた。

しかし、母にはたくさんの明るいことがあった。

母は青年といる時は楽しそうにしていてくれた。

青年がすることを誉めてくれた。

青年は母の過去を知ることで自分の過去を優しいもので溢れさせた。

青年もこの島で優しい心をあるれさせる。







これは牢獄の変わりに善人に囲われて悪を善に払拭させたお話。


そんな一色のお話であった。




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