ある日

 隣にいる君はいつも不機嫌そうに本を読んでいる。

 私はそれを盗み見るのだけれど、すぐにばれてしまう。

「なに?」

「うふふ。なんでも?」

 私は余裕がある風に返したんだけれど、もう君はあの頃の君ではない。君はこちらをジッと見つめてくる。恥ずかしくなって、私は先に視線を逸らしてしまった。すると君は大袈裟にため息をつき、そしてふっと笑う。

「どうして笑うの?」

「ほんと、好きなんだね」

 そう言って君は私の頬をつついた。自分の頬が熱くなっていることに気が付いた。きっと太陽よりも真っ赤だ。なんだか最近、私は君に弄ばれている気がする。悔しい。悔しいはずなのに、感情に反して表情は緩んでしまう。不思議だ。幸せなんだ。


 ずっとずっと。いつまでも。私は、君の隣で。

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君の隣で 姫川翡翠 @wataru-0919

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