3,971文字で体感できる九龍城

 なぜこれが短編で終わってしまうのか。いち読者として名残惜しくなるほど、大変美しい小説です。
 私は本当の九龍城に行ったことがありません。それでも空間を認識できたほか、嗅覚・視覚を刺激されました。

 現実では――本場である香港はもちろん、川崎でも“それ”が消失しました。だからこそ、VR以上のリアルさが秘められています。これは決して誇張ではございません。

 見聞きしたことはあるけど、行ったことがない。気になる方は、この作品を是非読んでみてください。まさに『リグレット』しない1作です。
 柚木呂高さんが描いたこの九龍城では、性愛も友愛も背徳感も――そして懐かしさも体験できます。