最後に

あとがき&エピローグ的な?



 お世話になっております、まんごーぷりんです。


 この度は『神様のウチのおとなりさん』を読んでくださってありがとうございます。そんなに長いお話ではないのですが、最後まで読んでくださった方、どれか一つでもエピソードを読んでくださった方、皆さまありがとうございます。




 幼いころから天才、神童と評判だった亜紗希と比べられ、ときに不器用な亜紗希の尻ぬぐいをさせられてきた夏子。勉強はできるけれど、うまく人間関係を構築することができず、ときに少しばかり言葉足らずで誤解を受けがちな亜紗希。そして、あまり似ていない双子の姉の横にいる自らを「下位互換」と認識し、姉の通う医学部に歪んだ嫉妬心を抱きつつ、自らの美貌を武器に這い上がろうとする有紗。いろんな女の子がもがいて、少しだけ何かをあきらめて、ちょっとだけ前を向いて歩いていく、そういうお話にしたつもりです。


 本当は、三つの物語の最後にエピローグをつけてから完結させようと考えておりました。こんな内容にするつもりでした。


 ――夏子は地元の病院で看護師として働いている。久々の休日にテレビをつけた。そこに映っていた亜紗希。彼女は東京の大病院で救急救命の現場に携わる医師として活躍しており、その働きぶりがドキュメンタリーとして取材されたのであった。

 VTR終了後、男性のベテランアナウンサーが、隣に座る女性アナウンサーにコメントを振る。その女性アナウンサーは、「……実はこの方、私の大学時代の友人なので、ちょっと照れ臭いんですけれど」と前置きしながら、亜紗希の仕事に敬意を払ったコメントを残す。数々の女優をも抑えて「なりたい顔No.1」に輝いたこともあるその女性アナウンサーは、報道番組のときの顔と、バラエティーでの顔とのギャップで一躍話題になったこともある、今をときめくスターに成長しつつあった。


「ここで一通り救急医療を学んだあとに、地元に戻り、地方の医療にも貢献したい」とコメントを残す亜紗希の言葉を聞き流し、夏子は「嘘ばっかり」とほほ笑む。やっぱり、亜紗希はこんなところに収まってるような子じゃなかったんだ、と寂しそうに、しかしどこか満足気に机を拭く。その左手の薬指には、指輪が光っている。


 そんなとき、夏子のスマホが鳴る。画面を照らすと、亜紗希からのメッセージが。


「帰ってきた、今公園」


 マジかよ、と言いながら夏子は家を飛び出していった。



……みたいな。

 まとめるのが難しかったので、結局エピローグとして投稿するのはあきらめてしまいました。





 さて、この物語の特徴としては、どのエピソードにおいてもちょっとだけもやもや感が残るところが挙げられると思います。

 夏子の物語では、亜紗希が二人の関係を「おしまいだ」とぶった切って、その後関係は改善することもありません。亜紗希の東京行きの直前にようやく、それまでの不毛な関係を終わりにして、もっと違うつながりを持ちたい、という意味だったということであったと、夏子は気づかされます。もちろん、亜紗希の言葉足らずな部分の誤解が解けたのは良かったのですが、その直後に二人は数年間お別れとなってしまうんですよね。関係改善も何もないじゃん、みたいな。

 亜紗希の話では、関われば関わるほどに消耗していく有紗という女友だちの厄介さが描かれております。意識的にか無意識的にか、亜紗希のことを攻撃してくる有紗。しかも彼女は亜紗希を利用して、医学部の彼氏を作ろうとしたり、わざとドタキャン・リスケを要求したりと好き放題。高校時代の元カレとの再会・復縁を報告した際に、祝福するどころか服装を馬鹿にしたり、亜紗希をコントロールしてこようとする有紗の姿勢に嫌気が指し、「有紗は夏子とは違う」「もういいかな」と、亜紗希は有紗との関係を本当の意味で切ることを決意する……というエンディング。女性の友情物で、こういう終わり方をするのってちょっと珍しいんじゃないかな、と思います。この人無理だから関わらんとこ、みたいな、身もふたもない感じ。現実にはよくあることだとは思うのですが、別に関係改善には至っていないし、亜紗希に何らかの成長を残したエピソードかというとそうでもないなっていう。

 そして、有紗の話。彼女の傍若無人な態度は、姉へのコンプレックスをこじらせた結果だ、ということがここで一応はっきりとします。有紗の嫉妬心は少し異常。ただ、双子の姉の紗友希もかなり性格に難があるんですよね。姉妹に向かって「金食い虫」みたいな暴言を吐くのは本当によくない。母に甘やかされて育ったことや、自分が本物の天才には勝てないことが分かっているからこその歪みなんですけどね。この物語で、有紗は医学部の彼氏と別れ、一人暮らしを始めます。いろんな人に捨てられ、一方で自分もいろんな人を捨てている。一人暮らしは、ある意味姉を捨てたようなものだと思っております(なお、一人暮らしを始めたことでむしろ母親との関係が改善した、という裏設定があったりもします)。ただ、ここで終わりと思われた亜紗希との関係ですが、有紗が多少反省したことや、亜紗希が広い心を持っていた(かつ、少し天然であった)ことにより、ぬるっと復活しそうな予感を残しつつ、物語は終わります。ええ、亜紗希、あっさり前言撤回かよ! みたいな。


 この物語の共通のテーマは「捨てる」こと。また、一度捨てちゃえと思った関係でも、時間が経ったりとか、互いに何かしらの心境の変化があったり、はたまた成り行きだったりでぬるっと復活してしまうことはありますよね。そういうちょっと間抜けな友情の在り方もまた現実としてあり得るな、という想いでこの物語を執筆しました。


 特別に伝えたいメッセージがあったわけではありません。ただ、「こういうこと、ちょいちょいあるよね」程度のノリです。全体的なぬるっと感、ごちゃっと感、「なんかちょっと好きかも」なんて思ってもらえたとしたら作者冥利につきます。笑



 これからもこういう友情物はちょいちょい執筆していく予定です。こういう、ぽわんとした感じのになるかもしれないし、もうちょっとダイナミックなストーリー展開の長編になるかもしれないし。「こういうの好き」みたいなのあれば、ぜひ皆さん、お聞かせくださいね。もしかしたら挑戦してみるかもしれません。



 長くなりましたが、ありがとうございました。読者の皆様に、これからも素敵な読書or執筆ライフを。



まんごーぷりん


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神様のウチのおとなりさん まんごーぷりん(旧:まご) @kyokaku

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