最終話:そして、空の彼方へ
ユウキは全速力で門へとたどり着いた。
「封印は⋯⋯」
辺りを見回す。
門は特に変化は無い。台座にはアルステリアが手にしていた剣が突き刺さったままだった。
しかし、どこを見回しても肝心のアルステリアがいなかった。
「姫様、どこだ⋯⋯?」
「⋯⋯ここだ」
振り向くと、岩に寄りかかって休んでいるアルステリアがいた。
「⋯⋯その様子だと、再封印は成功したんだな」
「思わぬ反動も食らってしまったが、なんとかな⋯⋯」
「引っかかる言い方だな⋯⋯」
「思ってた以上に封印がボロボロだったのだ。⋯⋯おかげで、門の『向こう側』の瘴気にあてられたよ⋯⋯」
「瘴気って⋯⋯。無事なのか?」
「⋯⋯魔力を根こそぎ奪われた。体内に瘴気が残っているせいで、回復もしない⋯⋯。今の私は、普通の人間と変わらんよ⋯⋯」
「そうか⋯⋯。でも、命は無事みたいで良かったよ」
「そういうお前はどうなのだ?⋯⋯勇者と闘ってたのだろう?」
「あぁ、勇者のヤツは黒い霧に撒いてきた。方向感覚を狂わせる霧だからな、しばらくは来れないだろうよ」
「黒い霧⋯⋯。そのような魔法まで使えると言うことは、ユーキはそこらの魔導師を超えてるな⋯⋯」
「そうなのか?⋯⋯うーん、こういうのは魔王様基準だから分からねぇな⋯⋯」
「ふふっ⋯⋯。⋯⋯さて、そろそろ行くか」
「行くって⋯⋯、何処に行くんだ?」
「知らん」
「⋯⋯は?」
「城は占拠された。私は魔力を全て失った。門の封印も(多分)大丈夫だろう。⋯⋯とりあえず、近くの街でも行くか!」
「いやいや!今ひっじょーに重要な一言が聞こえた気が⋯⋯」
「ふふ⋯⋯。私とユーキは運命共同体だ。これからも、共に世界を巡ろうぞ」
「⋯⋯へぇへぇ、分かりましたよー」
ユウキはぶつくさ言いながらも黒い鳥へと変化し、アルステリアを乗せて旅立っていった。
魔王の娘と召喚された魔導師 遅筆屋Con-Kon @Conkon02
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