(恐らく)膨張した太陽の影響で灼熱の大地と化した地球で、死を迎える直前の男性を観測している外から訪れた観測者の話。
観測するだけと言いながら初っ端から男性を誘って転ばせて脳に干渉している辺り観測者としてどうなんだそれはという感じで、わたしたちで話し合いをしている時もフランクな物言いをしているのが居て、中々に人間臭いです。外から訪れたモノに人間臭いと言うのはどうなんだという気もしますが人間臭いです。いいですね、嫌いじゃない。
こんな終焉の時ではなくら、もっと早く彼らと接触していたら良き隣人になれたのではないでしょうか。外見の形も自在みたいですし、絶対に需要ありますよね。
崩壊寸前の荒廃した地球で、ひとりの男が未知との遭遇を果たすお話。
SFです。実を言うと上記の要約は少し語弊のある表現で、正確には「未知がひとりの男との遭遇を果たす」お話です。視点保持者は男の方でなくこの未知さんの方で、つまり「人ならざる何者かの目を通して見た世界」というのがこのお話の最大の持ち味、魅力の根源だと思います。
というのもこの未知さんの個性というか、存在そのものがすでにして面白い。どうやら人間とはまるで生態の異なる知的生命体で、それを端的に表現できる単語(名称)がありません。ただし特性や特徴はしっかり作中に書き表されており、したがってそれがどういう生き物であるか、ざっくり外側からのイメージを想起すること自体は難しくないのですが。
この作品、完全にその未知さんの一人称視点によって書かれている、というのが肝で、つまり価値観も哲学も宗教も、それどころか生物としての様態からして異なる生物の、その頭の中を覗く形になるわけです。
この感覚、掴めるようで掴めない未知さんのものの考え方を、あれこれ想像しながら追いかけていく読書体験。この味わいが実に絶妙で、不思議なわくわく感がありました。その上で、さらに描かれる『ひとりの男』の情動や心情を、この未知さんのフィルターを通して見ることの心地よさ。なんとも説明の難しい、独特の手触りに悶えます。
巧妙な道具立てと、それにぴったりはまった使い方の光る、物悲しくも優しい終末SFでした。