現実

ぱさりと、床に彼岸花が落ちて我に返りました。


「あれ、どうしたの?」

「……いえ」


白昼夢。

きっと、白昼夢なのです。

こんな話をしていたから。


「少し、ぼーっとしてしまって」


晴れも渾沌こんとんとした現代であれば、里も異界も二項対立で考える必要は、きっとないのです。

神秘のベールは消えたわけではないのでしょう。


「これは、ごみ箱行きですね」


渾然一体こんぜんいったいであれば、ただベールはより薄く、どこまでも広がって、それを少しでもめくるか破くかしてしまえば、少しでも異界に寄ってしまえば、何かが見えてしまうだけなのでしょう。

例えば、夢とか、その最たるなのです。

ただ、それだけです。


そう思いながら、私は拾い上げた彼岸花を、ゴミ箱へと落としました。

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迷子のひがん 板久咲絢芽 @itksk_ayame

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