焼け爛れた町、その後

いつから、いつまで。いつから、いつまで。少女はしらない歌を口ずさみながら、地面にばらまかれた米をかき集める。振り向いてもだれもいない。

「おねえちゃん、どこ?」

くるくる回る眼球。水分を孕んだ声色。きみは誰。爆撃機が空を横切る。


少女の母親が、ヒステリックに喚いている。

何? 聞こえないよ。少女は耳を塞ぐ。

どうしてふつうになれないの? 

どうしてあなたはそんなに頭がわるいの? 

お願いだから、これ以上、困らせないでください。お願いだから。


が鳴いている。きみはどこ。早くおうちにかえりなさい。

「しんぱいするひとが、いるでしょう?」

「いないよ、そんなひと」

けらけら笑う。動き回る眼球を追いかけても、きみと目が合わない。


天井から、バケツ一杯分の水が降ってくる。水浸しになった床を猫が舐める。

(はやくはやく、壊してください)

ねえ、わかっているの?

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ししゅうばこ 七森 @magotto

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