「……触る大輔?」

「……じゃあエプロン持ってくるね」

「お願い」

「うん! 大輔のお嫁さんって言ってくれた。えへへ、嬉しい」

 姫が嬉しそうに頷き。軽い足取りでスキップをしながら姫が着替えるために使ってあるクローゼットを開けた。

「えっ?」

 なんでクローゼット開けたんだ?

「~~♪」

 姫は鼻歌を歌いながら何か服を出していた。

「……うん汚れてない、よし。大輔~~!」

 姫が何かを持ってこっちの方に近づいてきた。

「これでも大丈夫?」

 見てみると猫が胸のところに描かれていたエプロンを持って来た。

「大丈夫……。そのエプロンって前に買ったやつだよな」

 姫が持って来たのは前に大野たちと泊る前に買ったエプロンを持っていた。

「うん、そうだよ!」

 姫が頷いた。

「キッチンの方のエプロンでも……」

「うーん。そうなんだけど、せっかく大輔と一緒に買ったエプロンだから見て欲しいなって」

 姫がニコっと笑っていた。

「――っ。……そっか」

「うん。じゃあ付けちゃおっと……」

 エプロンを広げ、クロスになっている方から頭と両腕を通していた。

「……へぇ」

 腕の関節が結構、動いていて目を追うだけでも勉強になる。

「んと……」

 姫がエプロンの肩紐を掴んで整えていた。

「おっ?」

 掴むと手の形ってこんな風になるんだな。

「へぇ、勉強になる」

 姫がこっちの方をジッと見ていた。

「……触る大輔?」

「え……」

 手の形とか知りたいし、触って今の形が覚えられるなら触って覚えたい。

「そうだな。触って覚えていたいな」

「……わかった」

 姫がこっちの方に腕を握ってきた。

「……え?」

 そのままゆっくりと姫の方へと近づいていく。

「……はぁ」

 姫がそのまま手を握って深く息を吐いていた。

「姫? ――っ」

 呼びかけた瞬間。

 気づいたら俺の手が姫の胸に押し当てられていた。


「「――っ!!?」」


 手の感触的にはエプロンの布を触っているのだが、指と手のひらが沈むように落ちていく。

 姫の胸は触ってはいるがいきなり過ぎて頭がついていけなかった。

「ひ、姫?」

 彼女の方の顔を見ると赤くなっていた。

「だ、大輔がイラストの参考になるならおっぱいとか触ってもいいよ。それと、さっきお嫁さんって言ってくれたお礼……」

「――っ!」

 息がどんどん上がっていき、心音もドクンドクンと鳴り響いていた。

「……いいよ」

 姫の上目遣いでニコッと微笑んでいた。

「……あぁ」

 自分の顔がどんどん真っ赤になっていき。恥ずかしさで息が詰まりそうだった。

 けど、姫がこうして絵の参考にさせてくれるから……。好きな子の胸が触れるのが嬉しすぎる。

 大人としての威厳を保とうと思ったけれどやっぱり好きな子の胸だと思うと嬉しさが勝ってしまった。

「……わかった」

 俺は息を整えて姫の方を見た。

 そして改めてエプロンの方に目を向けるとやっぱり胸が大きく少しだけ左右の胸が溢れていた。

「……」

 横の方を見てみると、胸の重みで服のシワが出来ていた。

 やっぱり本が書いてある通りなんだな……。

「……なぁ姫、今着てるのって夏の服だよな?」

「え? うん、そうだよ」

 姫は頷いていた。

「なにあるの? ……あっ、そういえば前に大輔が言ってたっけ?」

「そう、生地の厚さによってシワが違う話。冬の外出る時のコートは分厚いからなかなかシワが出来づらいが、こうした薄手の生地だよシワが沢山だからだよ」

 写真を撮って姫の方に見せる。

「へぇ……この横のおっぱいに集まっている線が私の胸?」

「そう、あとは脇を閉じるとシワが出来たりとかするかな」

「へぇ……そうなんだ」

「あとは体の力を加えるとそこに力が加わって線が増えるかな。バトル漫画とかスポーツを描くときはそういったのを気にするともっとリアルに近づくよ」

「へぇ……」

 姫は自分のエプロンを引っ張っていた。

「……エプロンの方はあまり線がないけど?」

「そうなの?」

「エプロンの場合はタオルを例えるといいって言うらしいよ」

「タオル?」

 姫が首を傾げていた。

「そう、長い方を縦に持ってぶら下げて真っ直ぐの場合。重力でそのまま上から下に向けているからあまり線をつけなく生地を膝より少し上まであ描くといいって言われているって言うけど……」

 そのまま姫の体をみると本の言う通り肩の方に紐があるからそこから胸だけが膨らんでおりあまりシワがなかった。

「……へぇ」

「大輔?」

「あっ悪い。やっぱりこうして実物を見るといいなって」

 姫がこっちの方をジッと見ていた。

「……私も大輔のエプロン姿見たいから後で着て欲しいな」

「いいよ」

「――やった!」

 姫が嬉しそうに両手を握りしめてガッツポーズをしていた。

「……少しだけ触ってもいい?」

「え、あっうんいいよ……」

 姫がその場で頷いてくれた。

「ありがとう……」

 凪のキャクターのイラストをイメージしながらエプロンの構図を模索していた。

 フライパンを持って調理とか、シンプルにフライパンとフライ返しを持っている構図にするか……。

 鍋にお玉をすくって味噌汁を作っている構図にするか……描こうと思うものは描けるが初めての依頼でやっぱり相手の満足する作品ではなければ納得は出来ない。

「うーん」

 少しやっぱり悩んでしまう。どの構図にしたら凪は喜んでくれるだろうか……。

「どれが正解なんだ?」

「……大輔」

 すると姫が頭を触ってきた。

「……え?」

「頑張って、今の私にはそれしか言えないけど前に大輔が楽しんで描いたらそれで良いんだよって言ってくれたから楽しんで描いてみたら?」

 ニコッと笑っていた。

「……あっ」

 笑顔で笑っているえびニを描けば良かったんだ……。

「シンプルで良かったんだよな」

 そうだよ普通にシンプルで良かったんだ。他のイラストレーターさんみたいな技術ではなくてこれが俺のデビューであるんだがらシンプルで良かったんだ!

 凪から何か指示があったらそれを修正して送れば良かったんだな……。

「多分描ける気がする」

「え、本当大輔?」

「普通に笑っているえびニだけど……。姫は笑っているえびニは好きか?」

「うん。大好きだよ」

 姫が力強く頷く。

「……そっかありがとう答えてくれて」

「えへへ……」

 俺は姫の頭を撫でて、机の方に座り直した。

「……うん。やれる」

 よし描こう。

 楽しんで描こう。

 ただ普通に楽しむという気持ちで描き進めていく。


 ◇


「……ふぅ」

 色塗りも終えて4時間かけて下書きからポーズを変えて、えびニと同じ色に仕立て、色塗りやエフェクト、胸のエプロンマークには海老名相棒キャラでゆるキャラのウニのウーくんを描き加えて終えた。

「……あぁ」

 自分の中の海老名に対して愛を注いだ作品であるから今見てみると結構好きなポーズだ。

「お疲れ大輔」

 姫が冷えた水を手渡ししてくれた。

「ありがとう……」

 一気に喉に飲むとヒンヤリと氷が冷えきっていて水が冷たく美味しかった。

「……あぁ!」

 ずっと絵の方に描いていたから喉がカラカラだった。

「ありがとう」

「うん。……それでイラストはどう?」

「……自分の中では最高かもしれない」

 姫が画面の方を見ていた。

「……好き」

「え?」

 姫の方を見てみると目を輝かせていた。

「……大輔の絵、……好き」

「――っ! やった」

 姫に好きと言われて、嬉しかった。

「……すぅ」

 嬉しかった……。やっぱり好きな子に言われてただ普通に姫が居て良かった。

「ありがとう姫」

「うん。頑張ったね大輔」

 姫が俺の両肩に手を置いて優しくポン、ポンと撫でていた。

「……あとはこのえびニを凪に送るだけ」

 データを保存して、ファイル添付で凪にメッセージを作成し、送信ボタンに手を置いた。

「……ふぅ」

 あとは送信ボタンを送るだけ。それだけなのだが手が重かった。

 知ってる相手はいえ流石に緊張してしまう。

「頑張って大輔」

 姫が俺の方を叩いてた。

「あぁ……」

 そして、送信ボタンを押した……。

 

 そのあとメッセージを送信いたしました。と表示され、多分凪に送られた。

「なぁぁぁっ!」

 心音がバックンバックン鳴り響いている。

 仕事で会社相手に送るより手汗が物凄く出てしまっていた。

「……頑張ったね大輔」

 姫がそのまま手を頭の上に乗せていた。

「ありがとう……」

 心臓がまだ鳴り響いているがとりあえずはイラストが完成されたことが大きくずっとニヤけていて不安から喜びと達成感の方に変わっていた。

「……よしゃあ」

 手をグッと握りしめてずっと俺は喜んでいた。

 

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昔から好きだった幼馴染が遊びに来て一緒に同棲 二髪ハル @2kamiharu

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