晩年元年のフットボール

ジュン

第1話

私も七十になった。不勉強で、いつからが晩年の始まりなのかは知らない。けれども、私はいま晩年に当たるのではと思っている。七十歳で定年退職した今、私はフットボールを始めたいと思っている。これにはわけがある。私は子どもの頃、サッカー選手に憧れていた。将来はサッカー選手になりたいと考えたものだ。しかし、高校生ともなると現実というものが見えてくる。サッカーで食べていくことは、自分には無理だと。ところで、サッカーとは正式にはフットボールという。私は、サッカーをあきらめて、代わりに作家になった。しかし、フットボールをあきらめることはできなかった。なぜなら、フットボールの代わりに吹っ飛ぼうという気にはなれなかったのだ。しかし、いま仕事を全うして、私が吹っ飛ぼうが、誰にも迷惑をかけない。だから、晩年元年のフットボールを始めるんだ。永年元年のフットボールまで続けるんだ。退場になるまで。


終わり

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晩年元年のフットボール ジュン @mizukubo

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