友好の象徴となるはずの彼らが齎すのは、平和か……それとも?
- ★★★ Excellent!!!
【物語は】
プロローグは、エリカ視点から始まる。大好きな婚約者のお別れパーティで、自分だけが悲しい想いをする羽目に。それが誤解であるとも知らぬまま、ある人物の悪戯によって更に酷い結果となってしまう。エリカと婚約者は喧嘩別れしたまま、7年の月日を過ごすことになるのだ。
これは憶測に過ぎないが。エリカが誤解をしてしまった要因の一つには、彼と自分では釣り合いが取れないと思っているという理由があるのではないだろうか。彼女は自分自身に自信が持てないように感じる。
この不穏な始まりが今後、物語にどのように関わってくるのだろう。
【世界観について】
本編に入ると7年後、現在となる。
彼女が受けている授業によって、この世界がどんな状況なのか分かって来る。
この世界では、人間と吸血鬼が暮らしている。両者は決して仲が良いとは言えない。100年前にやっと共存という形で歩き出したが、そのいがみ合いは未だ変わらず、人間側と吸血鬼側共に”過激派”が存在している。
そして、この世界には様々な術が存在する。中でも、変身術というのは貴重らしい。術はこの物語に、どのような影響を与えるのだろうか?
【恋人の帰省により、変化する日常】
人間と吸血鬼の間で結ばれた和平協定。それに伴い建立されたのが、両種族が共に学ぶ学院である。それは友情を誓う、証のようなモノであった。しかしながら、人間と吸血鬼ではカリキュラムが別であり、それを受ける場所も分断されている。 (別の場所で受講する)
これは、どういうことなのだろうか。友好が表向きのものなのか、それとも何らかの理由があり分けられているのか。この辺については、後に分かって来るのではないかと思う。
この物語は単なる、いがみ合う異種族間による恋愛物語ではない。例えば、親世代が仲が悪いからと言って、子世代も仲が悪いとは限らない。もしかしたら、”いがみ合う異種族間に友情が芽生える可能性を秘めた物語”でもあるのではないだろうかと感じた。
エリカは7年間、いろんな想いを抱えていたに違いない。しかし、婚約者であり自分を傷つけた彼は、その事について詫びようとさえしない。自分と相手との想いの差に傷ついたまま、彼女は事件へと巻き込まれていくこととなる。
【物語・登場人物の魅力】
エリカの婚約者であり、吸血鬼であるキイチは、7年前は”優しい”と形容されていた。しかし、7年後の彼は余裕があり、いささか意地悪に思える部分もある。だが話を読み進めていくと、不器用なのではないかと感じるのだ。他人の悪戯により、産んでしまった誤解ではあるが、それを引きずっている彼女に対し、上手く接することが出来ていない。彼女が求めているものを理解できず、力で何とかしようとしているようにも感じる。しかしそれは、彼の不器用さなのかもしれない。
【物語のみどころ】
この物語は前述したように、単なるいがみ合う異種族間の恋愛物語ではない。
世界観設定がしっかりしており、この世界の中での常識を逸脱した事件が起きる。その事によりミステリー要素が産まれ、物語に厚みを出している。
そしてもちろん主役の二人である、エリカとキイチの関係や、やり取りも魅力の一つ。過去のことで心がすれ違ってしまっていた二人。彼らは希望でもあったが、過激派にとっては裏切り者ないし、敵である。
恐らく、二人が助け合わなくては乗り越えられないことが起きるであろう。狙われた理由が徐々に明らかになり、敵の正体も分かって来ると思われる。謎の部分も多い為、とても惹き込まれる物語である。
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二人の行く末を、人間と吸血鬼の戦いの結末をその目で確かめてみてくださいね。おすすめです。