【物語は】
プロローグは、エリカ視点から始まる。大好きな婚約者のお別れパーティで、自分だけが悲しい想いをする羽目に。それが誤解であるとも知らぬまま、ある人物の悪戯によって更に酷い結果となってしまう。エリカと婚約者は喧嘩別れしたまま、7年の月日を過ごすことになるのだ。
これは憶測に過ぎないが。エリカが誤解をしてしまった要因の一つには、彼と自分では釣り合いが取れないと思っているという理由があるのではないだろうか。彼女は自分自身に自信が持てないように感じる。
この不穏な始まりが今後、物語にどのように関わってくるのだろう。
【世界観について】
本編に入ると7年後、現在となる。
彼女が受けている授業によって、この世界がどんな状況なのか分かって来る。
この世界では、人間と吸血鬼が暮らしている。両者は決して仲が良いとは言えない。100年前にやっと共存という形で歩き出したが、そのいがみ合いは未だ変わらず、人間側と吸血鬼側共に”過激派”が存在している。
そして、この世界には様々な術が存在する。中でも、変身術というのは貴重らしい。術はこの物語に、どのような影響を与えるのだろうか?
【恋人の帰省により、変化する日常】
人間と吸血鬼の間で結ばれた和平協定。それに伴い建立されたのが、両種族が共に学ぶ学院である。それは友情を誓う、証のようなモノであった。しかしながら、人間と吸血鬼ではカリキュラムが別であり、それを受ける場所も分断されている。 (別の場所で受講する)
これは、どういうことなのだろうか。友好が表向きのものなのか、それとも何らかの理由があり分けられているのか。この辺については、後に分かって来るのではないかと思う。
この物語は単なる、いがみ合う異種族間による恋愛物語ではない。例えば、親世代が仲が悪いからと言って、子世代も仲が悪いとは限らない。もしかしたら、”いがみ合う異種族間に友情が芽生える可能性を秘めた物語”でもあるのではないだろうかと感じた。
エリカは7年間、いろんな想いを抱えていたに違いない。しかし、婚約者であり自分を傷つけた彼は、その事について詫びようとさえしない。自分と相手との想いの差に傷ついたまま、彼女は事件へと巻き込まれていくこととなる。
【物語・登場人物の魅力】
エリカの婚約者であり、吸血鬼であるキイチは、7年前は”優しい”と形容されていた。しかし、7年後の彼は余裕があり、いささか意地悪に思える部分もある。だが話を読み進めていくと、不器用なのではないかと感じるのだ。他人の悪戯により、産んでしまった誤解ではあるが、それを引きずっている彼女に対し、上手く接することが出来ていない。彼女が求めているものを理解できず、力で何とかしようとしているようにも感じる。しかしそれは、彼の不器用さなのかもしれない。
【物語のみどころ】
この物語は前述したように、単なるいがみ合う異種族間の恋愛物語ではない。
世界観設定がしっかりしており、この世界の中での常識を逸脱した事件が起きる。その事によりミステリー要素が産まれ、物語に厚みを出している。
そしてもちろん主役の二人である、エリカとキイチの関係や、やり取りも魅力の一つ。過去のことで心がすれ違ってしまっていた二人。彼らは希望でもあったが、過激派にとっては裏切り者ないし、敵である。
恐らく、二人が助け合わなくては乗り越えられないことが起きるであろう。狙われた理由が徐々に明らかになり、敵の正体も分かって来ると思われる。謎の部分も多い為、とても惹き込まれる物語である。
あなたもお手に取られてみませんか?
二人の行く末を、人間と吸血鬼の戦いの結末をその目で確かめてみてくださいね。おすすめです。
人間と吸血鬼が敵対する世界で両種族の間で和平が結ばれてから、百年。
優れた素質を持つ吸血鬼の少年キイチと人間である少女エリカは両者の友好を象徴する存在として、婚約関係にあるのですが幼き日の苦い思い出がエリカを蝕み、二人は中々、距離を狭めることが出来ず…
という異種族によるもどかしいラブコメテイストで始まるこの物語。
学園を舞台に素直になれないエリカとの駆け引きによるラブコメが繰り広げられるかと思いきや、物騒な陰謀が張り巡らされ、様々な思惑が絡んできたりと二人の恋路には障害が多いのです。
しかし、とてもテンポよく話が進むほど読みやすいので、読んでいると気が付かないうちにどんどん読み進めてしまうかもしれません。
第二章までを読ませて頂いた時点でのレビューとなります。
この物語の始まりである第一話のプロローグでは幼い恋心を描き、そして第三話で再会する成長した主人公とヒロインの心情でグッと引き込まれます。
そして素直になれない時に二人に降りかかる事件の数々。
それを乗り越える度に「恋」だったものがいつしか「愛」に変わっていく様子が見所の一つではないでしょうか。
「幼い恋」が「じれったい恋」に変わり、やがて「愛」へと変わっていく。
それを直接的な言葉を使わずに巧みな文章力で表現されています。
次にタイトルで主人公の名前を入れているのに許嫁であるヒロインの方は「ストレンジャー」と言う言葉を上手く使って、その「ストレンジャー」が何者であるのかを作中に取り入れている点も良いと思いました。
なぜならば、「吸血鬼である主人公」と「ストレンジャーという名を背負った人間であるヒロイン」という風にヒロインに付加価値が付けられているからです。
第一章で触れられた「ストレンジャー」の名が今後の物語に大きな影響を及ぼしていくのではないかと予想と期待をしています。
更に第二章の終盤で主人公とヒロインそれぞれの親友達のやり取りが第三章への期待を膨らませてくれます。
まさに期待の第三章!心待ちにしています!
皆さんも是非意地っ張りな二人の恋愛模様に触れてみて下さい。
吸血鬼と人間と対立がありましたが、この両者がメインとなる小説を初めて読みました。
これまでに吸血鬼の生態を表す映画や本は目にしたことがありましたが、
私がこれまで勝手に抱いていたイメージとは全く違うもので、読み進めるごとに明らかになるその細かな設定には関心させられます。
登場人物の名前はどれも覚えやすく、過去の人物なのかと調べると何名か該当する方がいました。
それを著者が考えて付けているのかは分かりませんが、これだけ設定する方だから何かメッセージがあるのだろうと
違った意味でまた面白さを与えてくれます。
世界観や単語、設定などはもちろんですが、個人的にすごいな、と感じたのはシーンの切り替えで見せるテクニックです。これは真似したい、と思うほど自然かつ、時に場面の緊張感をそのままにした状態で読者を誘導するので、驚きました。
個人的にはプロローグのエリカの様子を後半でも見られたら良かったなと思いましたが、そこを求めるからこそ興味を惹かれるのだと思います。
良い作品でした!