最終章 それからの皆
最終話 大阪での僕ら
というわけで、成人式の日から始まった僕らに関する物語は一段落したのだった。それからの僕たちといえば、マユとは遠恋を続けて、時には喧嘩をしながらもおおむね仲は良好。
そして、長期休みには大阪に帰って、カナやこーちゃん、かおちゃんたちと一緒に遊ぶ日々。そんな時間が2年程続いて、晴れて僕は、大阪の地に戻ってくる事が出来たのだった。
「にしても、ユータが運転するとか不安しかないわ」
後部座席のカナが笑いながらそんな事を言う。ちなみに、彼女さんとは交際を続けているものの、そろそろ結婚をせがまれているのだとか。
「大丈夫だって。ちゃんと免許はあるし、ペーパードライバーでもないよ」
僕は、大学に居る間に免許を取っておいたかいもあって、今は立派に自動車を運転できるようになった。
「ちゅーても、俺もユータの運転は不安やなあ」
同じく後部座席のこーちゃんも僕の運転には不安があるらしい。
「大丈夫、大丈夫。ユータがぼーっとしとらんかは、私が見張っとるから」
助手席に居るのはマユ。
「相変わらず仲良しだね。ふふ」
どこか微笑ましげに僕らを見るかおちゃん。
「かおちゃんも最近いい人見つけたんでしょ?今度はちゃんと捕まえとかないと」
そう。かおちゃんは、最近、会社の同僚で気になる人が出来たらしく、僕たちに恋愛相談を持ちかけて来たのだ。何度か昼食を一緒にしたものの、それから先に進めていないとか。かおちゃんも奥手だなあ。
「しっかし、またUSJとはなあ……」
感慨深げに言うカナ。
「あの日は、特別に思い出に残ってるからさ」
そう。今は、5人で、かつて成人式の日に行ったUSJに再び行く道中。社会人になってから初めての長期休暇をあわせて、皆で遊びに行こうということになったのだった。
「ユータとマユは、成人式の翌日に付き合い始めたんやったな」
その時の事を思い出したのか、カナが懐かしげにつぶやく。
「そうそう。だから、懐かしくなってさ」
「ところで、ユータ。まだ標準語なんか?」
「そうそう、カナ。ユータ、あれからだいぶ経つのに、大阪弁が戻ってへんのよ」
不満をカナに訴えるマユ。
「そのうち戻ると思うから、勘弁してよ……」
あれから、事あるごとに、マユとは大阪弁で話す訓練をしたけど、いかんせん、毎日使っていないと、染み付いた感じがしないのだ。
「ま、これから時間はたっぷりあるんやからね。なんせ、一緒やし」
嬉しそうに言うマユ。大阪に戻ってきた僕は、マユの実家から程近い賃貸マンションを借りて独り暮らしを始めたのだ。それから、マユが僕の家に入り浸る用になったから、半同棲状態が続いたのだけど。
「ユータもマユも、なんちゅーか、新婚さんらしく熱々やね」
「……」
「……」
カナのその言葉に、僕らは沈黙してしまう。そう。大阪に戻ってきて、半同棲状態になった僕らは、マユの「もう、籍入れてもええと思うんよ」という言葉に押されて、そのまま結婚。式は後ほど挙げる予定だけど、既に夫婦となっている。
「そうや。USJ行った後、ユータとマユの結婚記念パーティーってのはどうや?」
ふと、名案を思いついたとばかりにカナが言う。
「おお、カナにしてはええ案やないか。やろう、やろう」
真っ先に飛びつくこーちゃん。
「私も、いいと思う!」
そして、かおちゃんも。
「また、カナの奴、私らを肴にするつもりやで」
やれやれといった感じのマユ。
「ま、カナの下ネタも今更でしょ」
下ネタ耐性がゼロだった僕はもう居ない。
「私は、さすがにそこまで明け透けにはなれんわ」
一方、マユはといえば、未だにカナの下ネタを苦手としているらしい。
そんなこんなで、大阪に戻っても、相変わらずの生活をしている僕ら。
目の前の彼女が、僕とかおちゃんの仲人をしようとしたことから始まった縁は、これからも続いていくのだろう。
✰✰✰✰あとがき✰✰✰✰
「幼馴染な彼女が仲人をしたがるが、僕が好きなのは彼女なので困る」はこれにて完結です。当初、ユータとマユの二人が遠距離恋愛になった時点で締めるつもりだったのが、延長線になったために、時間がかかってしまいましたが、なんとか決着がついたかな、といったところです。
感想などがあれば、コメントいただけると幸いです。ではでは。
幼馴染な彼女が仲人をしたがるが、僕が好きなのは彼女なので困る 久野真一 @kuno1234
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