船は星を目指す
全ての規定手順を終了。
マニピュレータを戻すためにモニタに目を向ける。
ベッドに置かれた人形。こちらからの身体的接触を変換して相手の脳に投影するマンマシンインタフェイス。
人間に必要なものをソリッドに切り落としても、人間は人間で。
何を講じても年老い、そして永い眠りにつく。
少しでも先延ばしにする努力を行い、起動と眠りをシームレスにし掛かる負担を起動時間を延ばし必要な時に必要な時間を最小限に、そしてリソースとして最大限に使いながらも限界を迎えた
コストを考えれば単純に廃棄となる。
『されど我々を支えた先人の最後の時をなるべく穏やかに心安らかに。彼らの気持ちに、希望に沿うために尽くす。そうしなければ我々は誇りと言う物を失ってしまう、ただ生き残るための動物と変わらなくなる』
火星《の為政者たちはそう考え、結果生まれた終末医療施設がここだ。
少しずつの豊かさを増す火星だが、全てに回すゆとりは未だ足りない。全ての偉人を一度に起動し面倒を見ることはまだ出来ないが、一人ずつ少しずつを見送る火星にたった一つの施設。
コロニー群を超えて飛翔しているであろうポッドのことを思う。どうか無事に秋村さんの魂が地球に届きますように。
「……おつかれさまでした」
ひとり呟いて何となくマニピュレータで頭を撫でるようにしてから、オペレーションを終了した。
手の触れる距離 味付きゾンビ @aki777343
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