大災害に見舞われた世界、数少ない生存者の住まうコロニーで、管理AIと協力しながら作業を行う管理者のお話。
SFです。いわゆるポストアポカリプスものでありながら、でも同時にファンタジーであり、そしてバディものだったりもする大変贅沢な物語。こう書くとかえってイメージしづらいかもしれませんけれど、要はワクワクするようなロマンのいっぱい詰まった、「読者の求めているであろうもの」をしっかり提供してくれる作品です。設定や道具立て、キャラクターの配置など、ある種の王道のようなものを踏まえた、大事なツボを押さえて外さないエンタメ作品。
作品全体に通じる世界観、具体的にはしっかり終末してるところと、でもそれにまったく負けない物語の雰囲気が好きです。まさに崩壊後の世界と呼ぶにふさわしい、きっと相当に悲惨なはずの人類の現状。その中で生きる、というか己の役割をこなす主人公ふたりの、でもまるで悲観した様子のない、その振る舞い。ある種超越的な存在であるから、という理由はともかく、ふたりのその余裕から感じる頼もしさに、なんだか胸が躍るような心地よさがあります。
またそこに関連して、お話そのものががふたりの軽口めいた掛け合いの中で進んでいく、というのも楽しい。ストーリーとしての主軸は「この世界に何が起きたのか」という事実の開陳にあり、でもその最中にSFらしい設定面での面白さを織り交ぜ、なのに全体を包む外装はキャラクター同士の掛け合いすなわち彼ら自身の魅力という、よくよく考えてもみると相当にテクニカルな構成。いや読んでいる最中はそんなこと思いもしなかったというか、ごく普通に楽しんでいたのですけれど。
終盤から結びにかけて、本当に「こうなって欲しい」展開をくれるのと、その爽快感が最高でした。見せ方が上手いというか、好きにさせてくれる力のあるお話。ポストアポカリプスという荒涼とした世界ながら、でも確実に拓けていく未来を感じさせてくれる、爽やかな青空のような物語でした。