平行するハット

神城ハクア

パラレルの飾り


その日、世界は二分された……。




XXXX年、地球は大隕石メテオライトが衝突間近であることが報道されるようになった。

人々は第2の地球と言われている火星への移住計画が急進されていた。

しかし、それは人々の精神を駆り立てる「パンドラの箱」であった…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


XXXX-Y年、人類はまだ地球に大隕石が訪れるなど誰も考えていなかった。

日常という川の流れが漸次に過ぎ去っていた。



……今日の天気は~~

ありふれた毎日が今日も始まっていた。


「なぁ~今日もラジオ体操につき合わないといけないのか?」

気だるそうな声が妹の耳に入る。


「お兄は運動してないからラジオ体操くらいしないと体が軟弱になるよ。さっさと準備して行くよ。」


妹は赤いワンピースに何やら変な装飾を付けた帽子を被って颯爽とひとりで家を後にしてしまった。

俺も眠たいながらも家を出ることにした。

家をでるとエイテルバスが当然のように稼働している。


※エイテルバス…科学の進展によって発見された物質”エイテル”を使用した、空間を歪めて物体の凝縮移動を可能にした交通機関。

とても速い。

但しエイテルは貴重なため幾分かは値段が高い。


俺が運動なんてしなくていいと思ってしまうのはエイテルバスのせいも一理ある。

歩かなくても目的地に着けるし、俺の仕事はデスクワークだから筋力なんかいらんのだよなぁ

そんなことを思いつつ眠気眼ねむけまなこを上下させながら千鳥足のように歩く。

俺は残業で帰りが日をまたぐ毎日せいで朝は極限にまで弱い。弱い。それはもう王子がいない世界の眠り姫のように。


非力になりに足を進めてなんとか近所の公園に到着した。


「――おそい。もう始まってるよ」

冷酷非情にもとれる言葉を放って

友達であろう女の子達の輪に戻っていった。

何故かその子立も妹と同じような帽子被っていた。


「この広い土に伸ばせよ

          それ 一 二 三」


丁度ラジオ体操の歌の2番が終わった。

体操はやってないからセーフではないのか?

何度か突っ込みたくなったが余力の為に考えを放棄して、その後の体操をそつなくこなした。


「お疲れさまでしたー!今日はスイカの差し入れがあるので持って行ってください!」


子供たちがわいわいと群がる。

スイカはたちまちなくなり一斉に帰りだした。


「さて帰るか。」

頭は冴えた。子供に嬉しい夏休み、大人に厳しい夏休み。

過ごした歳月によって価値観の変わるものの代表例ではないだろうか。

但し残業は悪いことばかりではない。


大分昔に労働基準法が廃止されて、新しい

新日本労働時間規定法が発布されて、労働時間を一律8時間とし、時間外労働は強いることは許されない。世界はエイテルなどの新科学物を使った技術革新に力入れるようになってから無断で時間外労働を強いることで社員の自殺行為が続出したからである。


「本当に良い時代になったもんだなぁ。戦争なんて起きないし、皆楽しそうに技術を磨き発展させている。こんな日がずっと続くといいなぁ」




家に帰るとまた急に眠気が襲ってきた。

はぁぁ~ぁ今日は会社は休みだから1日中寝てるかもなぁ……


  バタンッ

さっとベッドに倒れ込んでの○太ばり速さで眠りについた。









…………。

「お兄ちゃん。残念だけどお兄ちゃんが思ってること実現しないよ…。」


帽子を眺めながら静かに呟いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お兄起きろーラジオ体操いくぞー」

妹の怒声によって休日の至福が妨害されたように感じた。


「うーーん?さっき行ってきたばっかじゃないか──」


「なにいってるの、遂に頭まで壊れ始めたの。今は朝の6時過ぎだよ早く準備しな」


「あれ?あれ?確かにラジオ体操は行った筈なのに確かにいつも6時頃にやってる天気予報がついている。ってことは夢?」


頭がこんがらがっているうちに妹は家を出て行ってしまった。


「と、っとりあえず行くか。」

慌てて出て行こうとすると玄関に妹の帽子が忘れてあった。


「妹のやつ怒ってでていったのにも関わらず自分だってぬけているじゃないか」


妹の帽子を持って外にでる。

あれ?妹の帽子ってこんな装飾あったっけ?

如何にも自分に覚えのある帽子にはなかった装飾であったが急いでいるためにあまり気にとめなかった。



その後は自分の記憶にある通りにラジオ体操を終えて家に帰ってきた。

ふと気になっていたことが頭に思い浮かんだ。


「なぁお前の帽子ってそんな装飾あったっけ?」


「?最初から有ったよ。この装飾気に入っているんだ。」


「そうか…自分の勘違いか。」


その後朝食を食べたらまた眠気が来たのでベッドで横になった。

残業の疲れからか直ぐに眠りについた。




…………………。

「お兄ちゃん。眠たいのに冴えてるね。多分次は正解を出しちゃうんじゃないかな。その時は本当の事を教えてあげる。平行時間の別世界構想をね」


お兄ちゃん好きだよ。だからもう一回眠って貰うね。またねこの世界のおにーちゃん


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その時は突然やってくる

3回目ともなると行動の最適化が出来てしまう。


妹が怒声をあげて家を出て行く。

それを追うように余力を使って走る。

何とか妹に追いつくことが出来た。


「あれ?帽子は。」


「あ!忘れてた!けどもうすぐ公園だから今日はいいや。」


その後もラジオ体操は難なくこなして家に戻った。

そこでリビングに妹の帽子を見つけた。

ただ、自分が知っている妹の帽子とは明らかに装飾が違った。


「なぁこの帽子って本当にお前のか?」

待ってましたと言わんばかりに妹が答える


「そうだけど、なにいってんの」


「違う。お待ちの帽子はもっと簡素な装飾で色もこんなに鮮やかじゃなかったはずだ。それにおかしなことをいうかもしれないが、俺はこの時間を3回過ごしている。ただ、変化していたのはお前の帽子だけだった。つまりお前が俺に何か仕組んでいるな。」



「……気付いてくれてありがとうお兄ちゃん。正解だよ。大正解。お兄ちゃんをタイムリープさせたのは私。けど目的もなしにやったわけではないよ。」


「その目的とはなんだ。」


「落ち着いて聞いてね。まず私は現世で生きている人物ではないの。XXXX+Z年の未来からやってきたあなたの産まれるはずだった実の娘なの。」


「娘!?俺の?」


「そう。でもXXXX+A(A<Z)年に地球に巨大隕石が落ちるの。それで地球そのものが崩壊後。火星に移った極小人数の人類が火星で命を繋いでいるの。それでその火星に移るためのロケットに誰が乗るのかで世界は絶望の渦に巻き込まれるの。各地で科学兵器が使用され、生き残りをかけて死ぬ人が後を絶たなくなった。私は平行世界の隕石が落ちない

世界線からこの世界の私を作って人々の知識を改変して危機を減らそうとしたの。だけどこの世界に元々いない私がこの世界で活動するとなるとどこかに必ずひずみが起こる。

それが私の帽子だったってこと。だから私はあなたに気づいてもらうためにあなたの世界を作ってそこに3つの帽子を変化させることによって違和感に気付いてもらおうとしました。」


「なんだよそれ、世界は平和が続いてみんなが技術革新を目指せるはずじゃなかったのかよ。培った技術を戦争に使っちゃ後戻りだろ。」


「わかった。それでどうしたらいいんだ。」


「ありがとう。今からXXXX+A年までに火星移住計画の完了、つまり、世界人類戦争の勃発の阻止が出来れば無駄に戦争で命を落とすうはいなくなるはず。」


「お願い、たったひとりの娘の願い。地球、人類を守ってください!お父さん!!!」


そう言い放つと目の前が真っ暗になり気づくと元の世界に戻ってきていた…。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

平行するハット 神城ハクア @haiime

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る