幸せな国の少女

はなのまつり

幸せな国の少女


とある街頭で傘を持ち、マイク片手に自分の主義主張を語る男性がいる。


内容と言えば、自国の生活保証制度や医療体制の見直し、緊急時の対応が悪いなどの批判と持論。


きっとタイムリーな話であれば、耳を傾ける人もいただろう。


けれど問題が過ぎれば今の事。


さも正しいかのように語るそれを、彼の前を行き交う人々は、耳を傾ける事なく足早に過ぎ去る。


それどころではないのだと言うように。


なんの変哲もない日常。代わり映えもしない風景。


6月に入り降り、やまぬ雨が辺りを灰色へと染める。


そんな街中、今日も彼は1人語らう。


ふと前を見やると、彼の前に傘もささずに近づく裸足の少女。


小学生くらいだろうか? 褐色の肌が日本人ではない事を伺わせる。


お世辞にも良いとは言えない格好と、傘もささないでいる彼女を見て彼は、心配の言葉と傘を差し伸べる。


「大丈夫かい?」


けれど少女はそれを受け取らず、言葉を投げ掛ける。




「私は足りているから大丈夫」

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幸せな国の少女 はなのまつり @hanano_matsuri

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