第3話      新たなる脅威

「アイギス、イリスから連絡は?」

彼女であればすぐに周辺500キロの探索が終わる。

そんな彼女が未だメンバーを見つけられないことをギルメガルドは信じられない。

「申し訳ございません。未だ。」

「わかった」

そう言いながらも納得できず、どのような可能性があるか考える。

そうか未だ見つからないか。もしかすると、ダンジョンなどの異空間の可能性もあるか。

いや、ただ遠いだけとも考えられる。だとすれば………

様々な対策を考えながらギルドメンバーに今後の方針を魔法を使い伝える。


メッセージ


ギルメガルド:「すまないみんな、付近にはそのよう

       な場所が見当たらないと、イリスか

       ら報告があがっている。ダンジョン

       の可能性を考慮して十分気をつけて

       行動してくれ。」

「それから一つ今考えていることが

        あるんだが…………………………

        …周辺調査によって………………

        であることがわかっているから

        な。我々でやろうと思うのだが、

        有名になれば場所がわかって帰れ

        るやもしれんからな。

        できるだけ早い返事をくれ。」


さて、まずはあそこに行ってみるとするか。


ギルメガルドが、玉座から立ち上がるとどこに行くつもりであるかを察して、アイギスが右後ろに立つ

「ギルメガルド様、ご一緒いたします。」

ついてくるのか。まぁいいか。こいつらの認識も確認しておくべきか。いや、その前に方針か…

そう考えながら、もう一度座り直し不安げな顔をしたアイギスに後ほど行くことにすると伝えると、魔法を使いイリスを呼び戻す。


オーダー


(イリス、アイギスと共に例のところに向かう。案内せよ。その前に帰ってきたら、今後の方針について話をするつもりだ。急ぎもどれ。)


(了解いたしました。)


よしこれでとりあえず大丈夫か。


これまでの間集まったモノたちは、一切動かずギルメガルドに感動していた。あるものは自身の知らない魔法に、あるものは一瞬で様々な可能性に気づき全てに対応する判断力に、そしてまたあるものは、彼から感じる力の波動に。


イリスが戻ってきた。


「遅くなり申し訳ありません。」

玉座の間に入るなりすぐに跪いた。謝罪の言とともに。

ギルメガルドはこの行為に、驚き困惑していた。


NPCが相槌をするくらいであれば、アップデートすることで、ゲーム内でも可能になるかもしれない。

しかし、命令の遂行に関する評価を自ら行い、まして主人が命令や怒ることもなく、謝罪するなど、処理やデータ量の問題でほとんど不可能のはずだ。


しかし、未だ可能性の域を出ないこととして一度頭から消した。


「良い、それよりも報告を頼む。」

これからに関わる重要な報告だ。ふむ、皆そのことを理解しているようだな。

玉座から見下ろし、守護司の反応を見て満足する。


「それでは報告させていただきます。巨大な木が宮殿から1キロほど離れたところに、そしてその木を中心とした半径5キロは草原となっており、その外側は広大な森が広がっています。その生態系ですが、草原では新種は見当たらないものの、上位の魔物が多く見られました。そして森なのですが、見たことのないものばかりで、邪神の生み出していた魔物に似た力を感じました。しかしいずれも、我々の脅威にはならないと思われます。見つかった村に関しては、50キロ続く森を抜けて20キロほど離れたところに存在していました。」

なるほどなるほど、これは面白い。

もし表情があれば、誰が見ても機嫌が良いとわかる顔をしているであろうほどに、彼は愉快であった。

守護司達は、雰囲気から主人の機嫌の良さを感じ、不思議に感じながらも、主人が愉快に感じていることに喜びを感じていた。


「報告ご苦労。ふむ、この状況どうみる?アゼルシフェス。」

さて、設定上ヘルヘイム最高の知者として、賢者の異名を持つその力、とくと見せてもらおう。


アゼルシフェス・アモルバーンは、種族を堕天使とし魔王サタンやアザゼル、マルファスなど強大な力を持ち恐れられた堕天使と悪魔の血を引く。ヘルヘイム最高の知者として、参謀としての役割を持つ第二席次元帥についている。見た目は堕天使とほとんど変わらないが、二本の角が生えており浅黒い肌をしている。瞳は綺麗な紫色で魔眼と言われる特殊な目を持つ。性格は比較的温厚だが、ヘルヘイムに関わる重要な作戦などでは冷酷になることもある。また、自信を作ったギルメガルドを崇拝しており、いつもどのように役に立つか考えている。また、戦闘能力に関しては堕天使の特殊魔法を使った肉弾戦が得意。

男性陣のまとめ役でもある。身内以外の人族は、下等種として見下し嫌っている。

であるから、ギルメガルドは内心少し心配しながら、聞いたのだが。

アゼルシフェスは

一度考えるそぶりをして、

「まず見知らぬ世界に来たことはほとんど確定と言って良いと思います。ですので偉大なる方々を早急に見つけるべきであると愚考いたします。そのために近隣諸国を支配下に置き、王になるべきかと思われます。その手始めとして、集落に魔物を追い立て、襲われているところに助けに行き、そして、アンデットであっても味方であると信頼を勝ち取るのがよろしいかと。逃げ出されても面倒なので、森と反対側からも魔物を使って襲わせましょう。」


なるほど、ほとんど私と同じことを考えているか。もっともやることに変わらないがな。

期待以上の答えに喜びを感じながら、揶揄うように答える。

「さすがは、ヘルヘイム最高の知者といったところか。しかし、メンバーからは未だそれに関する返答がないので最終方針は保留とするが、集落に関してはその作戦を行うとしよう。ちなみに状況によっては近隣諸国の支配ではなく世界征服であるがな。」

その状況というのは、国の上層部が腐っている場合のことなので、そうそう世界征服にはならないと思われる。が、この世界は民主主義なんて考えの存在しない、中世ヨーロッパに近い文明を持っている。

そういう時代の権力者達は今の時代の権力者よりももっとひどい奴であることが多い。

そういう考えのもと話した言葉であった。

ギルメガルドとしては、ギルド長として、年長者として、ギルドメンバーを守る義務があり、何より彼が守りたいと心から思っているため、メンバーが危機になれば国ですら滅ぼすかもしれない。

ギルメガルドは、ギルドメンバーの心配をしながらも、信じて行動を始めた。


情報収集や暗殺を専門とする部隊『冥界の蜘蛛』の

団長であるイリス・アモルバーンに案内をさせていた。それぞれがフェンリルの亜種であるナイトフェンリルに乗ってイリスに続く。



道中襲ってきた魔物を見て、報告を思い出していた。

ふむ、確かに邪神が生み出した魔物によく似ている。しかし、あれらよりも邪神に近い。

一体なんだ?邪神が生み出している?いやあれは確かに倒した。討伐エフェクトがしっかり出ていたし討伐報酬ももらった。討伐エフェクトでしっかり砕け散った。

まさか、邪神の力のかけらか?

討伐時のエフェクトは、伏線だったということか。

まだ確定はしていないが、もしそうならまた復活する可能性があるかもしれないな。気をつけるようにあとで共有するべきか。


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深淵に座するモノ The King @theking

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