世紀の大怪作降臨!ヤギュニウム大爆発!
- ★★★ Excellent!!!
柳生暦37564年、死都町田は大いに色めき立った。
押しも押されぬ柳生界のスーパースター、柳生十兵衛がこの街に表敬訪問に訪れるという。
十兵衛の首を獲れば金も狂気も思いのままぞ。十兵衛、ブッ殺るべし。柳生、ブッチ斬るべし。
かくして東洋一の大魔窟、町田に蠢く海千山千魑魅魍魎有象無象の怪人物どもは、一目散に打倒十兵衛に突き進むこととなった。
始めに言おう。こいつはやばい。危険という意味でも素晴らしいという意味でもやばい。インターネットの深淵に住まう怪物的物書き、アロハ天狗の送るパラダイムシフトな怪作。舞台は柳生一族が支配する柳生バースの日本。ジャンルはSF伝奇剣豪マーダーパンク小説とでも言おうか。あらすじは上に挙げた通り。この時点ですでにヤバいにおいがプンプンする。そして中をのぞけば肩書だけで頭おかしくなりそうなやつらがぞろぞろ現れる。主人公は柳生十兵衛の剣を2回止めた男、百手(ヘカトンケイル)のマサ。柳生十兵衛の首を狙うサイボーグ、ウォーモンガーたみ子。町田のインフラを支配する謎めいたマダム・ストラテジーヴァリウス。二千万の暴走族を率いる男、悪夢堂轟轟丸。柳生一族に復讐を誓うサイキック生首、二億兆利休。新陰流最大の忌み子、柳生ベイダー。そしてこれらの怪人どもを押しのけて異常な存在感を出す柳生十兵衛。などなど。この時点で頭がおかしくなりそうなオーラをぶちまけている。そして彼らはただやべーだけではないのである。一人一人が確固としたキャラクター性を持って群像劇を繰り広げるのである。(柳生十兵衛はヤバすぎるので除く)この時点で戦慄するような狂気がにじみ出ているが、ただやべー輩がうろうろしているだけではなく、『柳生十兵衛がやって来る!ヤァ!ヤァ!ヤァ!』は、小説としても高性能である。単なる悪ふざけや一発ネタではない確かな力をこの小説は持っている。小説としての柳生ヤヤヤのパワーを一言で表すならば、「全部盛り」といえる。コミカルなギャグでもってシリアスをなし、SF的なガジェットを剣豪小説のような文脈に組み込み、パロディをふんだんに用いて独自性を醸し出し、狂気を抱いて王道を駆ける。それでいてややこしくはならずわかりやすい。どの要素もぎらぎらと輝いている。そのパワーを持ったこの控えめに言ってあたまおかしい物語を描くという所業は、まず正気の沙汰ではない。狂人か英雄か妖怪の所業である。始めに言った通り、こいつはヤバい。遭遇するだけでSAN値が削れそうな怪物である。しかしあなたがひとたび好奇心を持って恐るべき町田に足を踏み入れたならー至高の読書体験は、あなたを逃がさない。