すべての、この連載を追えるものは幸せである。

町田に柳生十兵衛来たる、という冒頭を読んでそっとブラウザを閉じる者は不幸せである。内輪受けを狙った色物小説でしょ、と開きすらしない者は不幸せである。なぜならあなたは新しい世界の扉を気づかぬまま閉ざしてしまう。
表層と深層が奏でる不協和音のようで、そうではない奇跡的な物語を見逃してしまう。

二兆億利休、と聞いて首を振る者は不幸せである。ウォーモンガーたみ子、柳生ベイダー、悪夢堂轟轟丸、それらの名を聞いて引き返すものは不幸せである。なぜならあなたは見逃してしまう。
この、煮込みに時間をかけたパロディとオマージュの丁寧なテクニック、その底を流れるほんとうの物語の力というものをあなたは見逃してしまう。

わたしが自分以外の他人を褒めることは少ない。完結していない物語に言及することはもっと少ない。そのわたしが連載として、先の知れぬ物語、完結すると約束されている物語を、他の読者諸兄とともに一歩一歩追うことに喜びを感じる。
これは小説であるが同時にコミックであり、パルプであり、体験である。インターネットを介してわたしたちは幻想の町田界隈を取り巻く、異様な熱気に身を投じる自由を持っている。

これは決して内輪受けの物語ではない。パロディ元がわからなければ楽しめない物語ではない。まだ完結してないのに、いいから読んでみ、と勧められる数少ない物語である。
書き終えてからの連載形式とのことのため、途中で我々が異様に期待を寄せるあまり、その圧で作者が書けなくなることもないのもいい。チヤホヤされすぎて浮かれて登場人物と作者の掛け合いショートストーリーとか挟んでこないのもいい。あらかじめ天狗なのもいい。

いまんとこ全部いい。

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