第2話
各階層を守るナザリック守護者たち──今や、彼らNPCたち全員が自我に目覚めている。
守護者統括アルベドより各階層に通達がなされ、今、第六階層アンフィテアトルムにNPCたちが集っている。
すでに全員がモモンガに対する忠誠の儀を宣言しモモンガは受け入れていた。
「汝らの忠誠、しかと受けた。お前たちを呼び出したのは、日頃より忠義を尽くすお前たちの顔を見ておきたかったのだ」
「ありがたきお言葉っ! 我ら一同、歓喜の念に打ち震えております!」
アルベドが歓喜の声を上げた。その背後には膝をつき首を垂れる守護者たちがいる。
アルベド同様、守護者NPCのレベルは一〇〇と高水準にある。ユグドラシルのプレイヤーが侵攻してきた際の防衛を司っており、持たせている武具や扱う魔法も侵攻に対抗できるものが与えられている。
まず、第一階層から第三階層までを守護するシャルティア・ブラッドフォールン。
豪奢なゴシックドレスに身を包む小柄な銀髪の少女だ。妖しく光る赤い瞳に口元の牙は吸血鬼(バンパイア)の証であり、真祖でもある。
次に第五階層守護者のコキュートス。
その姿は虫そのものだ。身長は優に二メートルを超え、四本の腕は太く力強さを感じさせる。武人であり、虫人のヴァーミンロードである。
そして第六階層守護者のアウラとマーレの姉弟コンビ。
姉が少年の、弟が少女の服を着ているエルフ種の姉弟である。姉は男勝りで、弟が大人しめと、いわゆるギャップ萌えの典型だ。
本来であれば異形種オンリーのギルドであるが、彼らはNPC。そういう制約はあくまでも加入するプレイヤーのみの制限となっている。
戦闘メイドのプレアデスや一般メイドに人型が多いのは、ギルド制約に縛られないうっぷん晴らしに作成されたことが大きいと言える。
最後に第七階層守護者のデミウルゴスだ。
悪魔にして守護者最高の智謀を持つとされる。
細身の体にストライプのスーツ。撫でつけた髪に知的さを引き立てる眼鏡をかけている。
モモンガが呼んだ守護者たちは以上だ。他にもいるが、今は全員を呼び出す時間が惜しい。
ここにいない階層守護者は二人。
第四階層の守護者ガルガンチュアは大きすぎていちいち転送しなければならない。準備に時間がかかるので省いている。
第八階層の守護者ヴィクティムは、プレアデスたちに指示を下したように八階層の警備を最大級にして守りに当たっていた。
八階層こそナザリック最大の防衛拠点であり、何かがあったとしてもそこで食い止められるようになっている。
そこを突破すれば玉座の間だ。アインズ・ウール・ゴウンのメンバーたちはそこに集い、最後まで生き残ったプレイヤーを相手にするという悪のロールプレイをすることを念頭に設定してある。
もっとも、ユグドラシル現役時代に玉座の間までたどり着いたプレイヤーは存在しないのだが。
今や伝説となった、一五〇〇人討伐隊を全滅させた階層であり、モモンガが全幅の信頼を置いてよい守護者でもあった。
他にも領域守護者が存在するが、特殊な任務を与えているので動かすことはできない。
「そしてもう一つ、諸君らに伝達事項がある。私からも紹介しようっ!」
パチンとモモンガの指が鳴らされると円形闘技場のあちこちに眩い光が灯された。スポットライトが地面を走りモモンガに焦点が合わされる。
守護者たちの視線を浴びながら、モモンガは異空間から取り出したマントを翻らせる。
そこに現れたのは──
「我が娘、シズっ!」
スポットライトを浴びてシズが目を細める。その肩にモモンガがマントを羽織らせる。
「わ、シズ様だ」
「シズ様、可愛いな~」
アウラとマーレが囁き合う。
コキュートスはふしゅーと息を吐き出し、デミウルゴスは眼鏡の軸を人差し指で直す。
「ナザリック後継者としてシズ・デルタを指名する。これに異存ある者は構わぬ、声を上げるが良い」
「我らが主にして至高の41人の頂点に立つお方の決定に異存など……我ら一同、シズ様に忠誠を捧げる所存です」
アルベドの言葉にモモンガは頷いてみせる。
「シズ様に変わらぬ忠誠を捧げるでありんす」
優雅にスカートを摘まんでシャルティアが一礼する。
「忠誠を誓います」
アウラとマーレが胸に手を当てて宣言する。
「忠義ヲ尽クシマスっ!」
コキュートスも続き、デミウルゴスも立ち上がる。
「我らの忠誠をシズ様に捧げると誓いますっ!」
シズが全員の宣言を受け止める。その頬は少し赤らんでいる。守護者たちの熱気が肌で感じられるほどだ。
「お前からも何か一言言ってあげなさい」
シズの肩に手を回してモモンガが誘う。
「うん……その……」
おずおずとシズは頭上に手を掲げるのだった。
「シズ様、がんばれ~」
アウラとマーレが応援する。
「オオオオ、何トイウ美シキ光景っ! コレゾ、マサニ武人ノ本懐っ!」
ブシューっと白い息を吐き出し、興奮したコキュートスが鉾で地を穿つ。
「シーズ! シーズっ!」
そして、デミウルゴスが声を上げて音頭を取り始める。やがて唱和は重なって闘技場いっぱいにシズの名を呼ぶ声が反響して響き渡るのだった。
「はわわ……」
思いもよらぬ連呼の声にシズは手を掲げたまま固まるのであった。
とても……大変……困ります……
パパ、助けてという視線をモモンガに向けるが、すぐに意を決したように前を見ると……
でも……これがパパの……娘としての何か…だから……
「えい、えい、おー」
手をグーにして空に突き上げるのだった。
「えい、えい、おー!」
そしてもう一度シズは繰り返す。
「えい、えい、おーっだっ!」
アウラが調子よくシズに合わせると、えい、えい、おーは全員に伝染して拳を突き上げる。連呼される言葉に闘技場は熱を帯びて盛り上がりは最高潮を迎える。
「素晴らしいぞ、お前たちっ! えい、えい、おーっ!! フハハハハっ!!」
モモンガも叫び、忠誠の場は笑いに包まれる。シズが振り向いて、腕を広げて迎えるモモンガに駆け寄って飛びつく。
「パパ~~!」
「よくできた。偉いぞ、シズ」
「うん」
言葉少ないながらも使命を果たした喜びでシズがコクコクと頷く。
もはやはたから見ればバカ親のようであるが、コキュートスなどは感極まっている。
「その忠義、確かに受け取った。このモモンガ、感極まった。これからも我が娘をよろしく頼むぞっ!」
「はっ!」
全員が敬礼で返し、モモンガとシズの姿は転移によってかき消えていく。
そのまだ熱気が残る現場でデミウルゴスは呟く。
「我がナザリックの次期当主選抜……さすがはモモンガ様だな」
「え、どういうこと、デミウルゴス? 何がさすがなの?」
マーレが首を傾げる。
「モモンガ様はナザリックの問題を二つも同時に解決されたことですよ」
「二つ?」
一つはわかる。このナザリックの後継者問題である。ナザリックに残った至高の最後であるモモンガがいなくなればこのナザリックは崩壊してしまうだろう。
シズ・デルタが後継者に指名されたことでその心配はなくなった。
「もう一つは内の争いを大っぴらにすることなく解決されたということです」
「どういうことだよ、デミウルゴス?」
アウラもわからないと首を傾げる。
「わかりませんか?」
わからないとアウラとマーレが首を振る。デミウルゴスは視線の先に並ぶ二人を指さす。
アルベドとシャルティアの間で見えない火花が散るが、それは表面化せずに冷笑で交戦していた。
「モモンガ様が世継ぎを定めなければ誰がこのナザリックを継ぐのか……世継ぎ云々前にモモンガ様に妃がいなければ始まりますまい……それゆえに正妃の座を巡る争いが起こる。ですが後継者が定まったことで両者は鉾を収めざるを得ない、ということです」
「ああ、そうかー」
「なるほどー」
「もっとも、何があるかわかりませんからね。いずれはその話も進めることとなるでしょう。どちらが我が主の妃になるかは置いておくとしましょうか」
(将を射んとするなら先ず馬からと言いますわ。シズ様に忠義を示し、もっともモモンガ様が信頼しているとシズ様に思われれば正妃は私のもの……この小娘に渡してなるものですか……)
アルベドが冷笑をにっこりとした微笑みに変える。
(この垂れ乳女……お前の考えていることなど見え透いているのでありんすよ? 私はメイドたちのことを良く知っているでありんす。あの子たちに近づいてシズ様に誰よりも信頼されれば、愛しきモモンガ様に相応しいのはこの私だと売り込めるでありんす! 見てなさい、吠え面かかせてあげるんだから)
「それではごきげんよう」
シャルティアは余裕という態度を取り繕ってアルベドに一礼する。
アルベドとシャルティアのモモンガ正妻の座を巡る争いが今幕を開けるのであるが……それはまた別の話で──
「うわぁ……なんか怖い……」
「関わりたくねー……」
呟くマーレとアウラの後ろではさっきからグルグルと徘徊するコキュートスがいた。
どしどしと地面を踏みしめる音が響いている。
「アア、美シスギル! 夢ニマデ見タ光景。モウ一度夢ニ見ルクライ脳デ再生サセネバ……」
「コキュートス。いい加減帰って来たまえ」
「デミウルゴス。シズ様トイウ世継ガ出来タ喜ビニ耽ッテイルノダ。邪魔ヲスルナ」
「邪魔はしませんが、自分の部屋に戻っておやりなさい」
「ソノツモリダ」
呆れるデミウルゴスに背を向けてコキュートスが去る。
「それでは私も持ち場に戻ります。後片付けは二人に任せますよ」
「はーい」
「あたしらも帰って昼寝すっかな~」
そして闘技場から守護者たち全員が去るのだった。
◆
その日の終わりのナザリック地下大墳墓のメイド休憩室。プレアデスの戦闘メイドらが座る専用席七つのうち六つが埋まっている。
一般メイドがプレアデスと同じテーブルに座ることは許されていない。
「それぞれの階層の警戒態勢が引き上げられています。我々も注意を怠らないように……」
きらり、と眼鏡を光らせるのはみんなのお姉さんであるユリ・アルファ。
その正体は首なし騎士(デュラハン)で純粋な近接戦闘特化のクラス振りをしている。
知的で少し堅い性格をしているものの、料理が得意で全員分の好物を熟知する。
本来の七姉妹(プレイアデス)が揃っていないときの六人(プレアデス)のまとめ役といったところだ。
「ユリ姉さん、ナザリックに攻め込むなんて命知らずいないっすよ~」
皿のお菓子を掴むとルプスレギナ・ベータは頬張る。好物なのでむしゃむしゃと止まらない。椅子から垂れた隠す気もない尻尾がフリフリとご機嫌の意思を示す。
赤毛のバトルシスターの正体はワーウルフ。今日はセバスの下について外の斥候に出ていたのだ。
戦いともなれば癒してもよし、殴っても良しのバランス型となる。
ちなみに本人としては、面倒くさいことは誰かにやらして自分は高みの見物をしてたい派である。
「そんな愚か者は捻りつぶすのみ……」
フッと呟く黒髪ポニテのメイドはナーベラル・ガンマ。
ドッペルゲンガーであるが、種族としての特性を伸ばさず、レベルのすべてをクラスに割り振っている変わり種だ。
戦士であり、超一級の魔法使いとして第八位階までの魔法を使いこなす。プレアデス特級戦力の一人でもある。
「それより……私たちの妹におめでとうと言うべきよね?」
ハイライトのない瞳のソリュシャン・イプシロンが紅茶に口を付ける。
人の姿をしているが正体は捕食型スライムだ。何でも食べるが、溶かさずに物だって運ぶことも可能だ。
アサシンとしての能力に長けており、公私混同は分けて考えられる柔軟タイプである。
「フフ、シズがあのお方の世継ぎに選ばれるなんて姉としてとても鼻が高いわ」
鼻高々という風に摘まんだグリーンビスケットをエントマ・ヴァシリッサ・ゼータが頬張る。
和服風味のメイドドレスに身を包む可憐な少女の正体は蜘蛛人(アラクノイド)であり、その姿は蟲を集めた集合によって人の姿に擬態させたものだ。
ナザリックでも稀なフジュツシであり、魔法戦士としての能力に長けていた。
「私が……姉……だから」
そしてシズがフルフルとエントマに否定してみせる。
その手元にあるのは超高カロリーなシズ専用飲み物。自動人形用に作られたものだが、実は普通の人間も食することができる。
ちなみにとても甘くて美味しいフルーチー味(シズ談)。
食い意地の張ったルプーがさっきからいやらしく狙っているので両手でしっかりと守っている。
「まあ、モモンガ様の世継ぎでは飽き足らず、姉の地位まで狙うだなんて、シズったらヨクバリねえ……」
シズがまたフルフルと否定。
「狙ってない……横取り……ダメ」
シズとエントマの姉妹争いは言い出すと切りがない。
そもそも、至高の御方たちが創造したメイドに作った順番はあれど、姉や妹という明確な設定は存在しないのだ。
それも理由にした、どちらが姉かという二人だけの争いはおそらく決着はつかない、というのが他のプレアデスの見方だが、六姉妹の年齢的な序列は作られた順番ではある。
この二人の場合、作り始めた順番と完成した順番が前後するのでどちらも姉であり妹であるとも言える。
「ところで~ シズがモモンガ様の娘なら、あたしらだってモモンガ様の娘ってことにならないっすか?」
「ルプスレギナ……少しものを考えて発言しなさいよ……」
ユリが額に手を当てる。
「その駄犬的発言はここだけの暴言と心得なさい。不敬にもほどがあります。私たちだけならともかく。外ではシズ様と呼びなさい」
じろりとナーベラルがルプスレギナを見る。
「まあ、外ではともかく。ここではシズは私たちのシズでいいじゃない。シズが至高の御方の玉座をいずれ継ぐにしても、モモンガ様は我らの主として君臨されているのですから」
「そうっすよね~ シズ様、最高っすっ! これ、食べていいっす!」
ソリュシャンの助け舟にルプスレギナは自分のお菓子をシズに差し出す。
「それでシズは何かないのかしら? 怖れ多くも麗しき我らの主に選ばれたのですから、抱負くらい聞かせてほしいわ」
「抱負?」
エントマの言葉をシズは反復して問い返す。
「あの御方の娘として心にある決意とか、大志とかそういったものです。あなたが何を目的にしているのか、それを口にするのが抱負というものです」
「決意……」
ユリの言葉にシズは器に目を落とす。ゆらゆらと濃厚な液体がシズの顔を映す。
私は……正式名称は「CZ2128・Δ(シーゼットニイチニハチ・デルタ)。
シズ・デルタは略称。
自動人形として至高の御方によって創造された。
でも、私を作ってくれた方はもうここにはいない。
マシンは人の心や感情を良く知らない。
だからどういう風にソレを表せばよいのかを知らないまま目覚めた。
その私に心と感情をくれたのはパパだった。
私は……パパが好き。
この世界の誰よりもパパを好きな存在……
だから、私が、私だけがパパの娘なんだ。
後継ぎに選ばれた。
その理由なんて知らない。
一緒にいることだけが望み。
だから私はその存在に追い付かなければいけない。
パパみたいな……王様に……
ごくごくとシズは杯を飲み干すと立ち上がった。みんなの目線が集まる。またさっきみたいに頬が熱くなる。
「私は……パパみたいな……まおー様になりたい……」
たどたどしくも精いっぱい言葉にする。
「どんな魔王様っすか~?」
拳をマイクにルプスレギナが付きだす。今度は誰も止めない。みんなシズの言葉の続きを待っているのだ。
「私は……パパみたいな……立派で……強くて……優しいまおー様に…なりたい」
それがシズ・デルタの決意表明であった。
◆おまけ編
【シズ・デルタがまおー様になるために必要なことその1】
私もパパみたいに大きくなる! そのために必要なことは……
湯煙上がるナザリック大浴場。湯上りタオルに定番は瓶詰めミルク(自動人形用=開発:ユリ・アルファ)である。
ごくごくごく……ふう……
肩に湯上りタオルをかけたシズは腰に手を当て、牛乳瓶に入れたカロリードリンクを一気飲みする。
こんな華奢なボディではパパみたいな立派な王様には程遠い。
ここはもっと出る所は出て引っ込むところは引っ込むスーパーボデーを手に入れなければならない……
ルプスレギナ情報によると、風呂上りにこうすれば大きくなれるっす! であった。
シズの野望第一弾は完璧なボディーゲット作戦である。目標はアルベドクラスのいい女(シズ談)。
「いい飲みっぷりっすよ~~ シズ、頑張れ~~ 姉を越えるのだ~~」
「お代り……」
空き瓶をルプスレギナが受け取りお代りを渡す。
「あのね、シズ。意気込みはわかるんだけど。それ飲んでも大きくはならないわよ……」
ユリからダメ押しされる。
「ダメ……?」
「無論ダメです。オートマトンは成長しません。防水はばっちりとはいえ部品が水気で錆びたらどうするつもり?」
シズはオートマトン。手入れは大変なのだ。
「でも、ルプス姉さんが……」
「100%無駄情報です……」
眼鏡の位置を直したユリの目が光った。駄犬には調教が必要である……
それからユリの説教を食らうのであった。だがこれで諦めるようなシズではない。
次なる策がある。のだった──
【シズ・デルタがまおー様になるために必要なことその2】
「じゃあ、改造すればいいっす! 完璧なるマシンボディでナザリックを蹂躙するっすよ!」
ルプスレギナが閃いたと力説する。ユリからたっぷり説教を食らった後だというのに懲りる様子はない。
シズはコクコクと頷く。
そう、こんなことではシズは諦めないのです。超強いまおー様ロードはまだこれからなのです。
「ダメ?」
シズの問いに鍛冶長が首を振った。火炉の中のサラマンダーがちろちろと赤い舌のような炎を噴き出している。
ここはナザリック地下にある鍛冶場である。
第二弾はシズ大改造計画。武装性能をアップさせることで超強化すればシズちゃんの天下は近い……ってルプスレギナが言ってた。
「戦車ボディ……」
「……」
「両肩にキャノン……」
「……」
「ビームサーベル……」
シズお手製の改造計画図を見せるが、鍛冶長の断固拒否でとん挫することになったのである。
「やっぱり基本に戻るしかないっす! 支配者としての貫禄を示せばみんなついてくるっすよ」
その次なる手は……
【シズ・デルタがまおー様になるために必要なことその3】
「あいん、つばい! あいんつばいっ! ストップ! 敬礼っす!」
アーミー服に身を包んだモブ骸骨たちが一斉に立ち止まり、壇上で指揮を執るルプスレギナと隣に控えるシズに敬礼する。
その後ろにはメイド服姿のプレアデスと一般メイドが控える。
一糸乱れぬ見事な動きはほれぼれする位だ。
翻るはマント。パパから貰ったやつだ。頭にすっぽりとドクロ十字が入った軍帽をかぶりシズが敬礼する。
身にまとうのは軍服っぽいもの(制作:ソリュシャン)だ。肩に下げた飾緒がゆれる。
デザインはナザリックが誇る図書室にあった世界軍服辞典より抜粋された某国のもの。
「このデザインは世界征服っぽい……」(ナーベ談)。によって決定されたものだ。
第三弾は「ちょー威厳を高めてシズちゃんのカリスマ性で勝負するっすっ!」である。
もはや方向性が読めないがシズは真剣そのもの。
ぱぱ、みたいな「強くて」「優しくて」「とてもおきっい」まおーになるために努力は欠かさないのだ。
「目標は世界制服……かっこかわいいで地上を制圧……せよ」
スポットライトを浴びたシズが天空を指さした。宣言を受けたモブたちの歓声に包まれる。
「征服……じゃなくて制服……何だか面白そうな計画ね」
フフっとエントマが笑うのだった。
そして後日……モモンガに謁見する守護者がいる。
「世界制服計画だと……シズがそんなことを……」
「は、お耳に入れておこうと思いまして……」
モモンガに報告するのはデミウルゴスだ。配下から仕入れたシズの近況で報告すべきと参上していた。
「面白い」
「は?」
その言葉にデミウルゴスは頭を上げる。
「武力ではどうにもならぬことがあるということだ。デミウルゴスよ、この世界の文化レベルがどれほどのものであるのか至急リサーチを開始せよ。市場での娯楽消費の傾向を把握するのだ。シズには内緒で頼むぞ」
「畏まりました……」
あれだけの情報で理解し先の手を打つとは……
戦争は相手を叩き潰す最終手段。だが、市場経済や文化において敵を圧倒すれば武力は最小にして敵に勝つことができる。
さすがはモモンガ様よ、と口元に笑みを浮かべるデミウルゴスだった。
まおーの娘 mao_dombo_ru @tukiho
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