2章 チームの意味

チームが組めない子

【最下階に到着しました】


ローワンの部屋から出ると問答無用で1番下の階に召喚された。

また最上階まで行かないとかと思うと身体が鉛のように重たくなる。

いずれ、ラスボスとバトルしても下にいかないようなスキルが欲しいけど……そこまでいくとなんかなぁ……


「ーーあの! チームを組んでください!」


不意に声をかけられ声の方向を見るとそこまでいい武装をしていない中学生くらいの女の子が必死な面持ちで話しかけてきた。


「ごめん。俺、チームは間に合ってるから」

淡々と答えると女の子は「そうですか」と悲しげに呟いて俯いた。

この子、まだ入ったばっかなのかな?

このダンジョンを登るにあたって最大5人のチームが組める。

気に入らなかったら解散もできるし、また新たなチームを組んだりと編成は自由だが、どっちにしろ単独で動くより勝率は上がる。

ラスボスとかと戦う時も5人チームなら5対1で戦えるし、とっても有利。


「ーーけけっ。あいつまだチーム組めてねぇよ」

「ーーそりゃ、レベル4だぜ? 誰も組まねぇだろ」


そんな冷ややかな声が聞こえてくる。

女の子は顔を真っ赤にして唇を噛み締めてるため、彼女に向けられての言葉だろうか。

あー。やだな。前の自分を重ねちゃう。


「すみません。いつまでもここに居られたら迷惑ですよね」

「ううん。全然いいんだけど……大丈夫?」

何に対しての大丈夫かわからないけど、何となく聞いてしまった。

女の子は首を縦に振って力なく笑った。


「はい。慣れっこですので」


……慣れっこね。

慣れるくらい断られ続けてるのかと思うと居た堪れなくなる。

誰も助けてくれないのは辛いよね。わかるよ。その気持ち。


だから、そういう時こそこの『スキル屋』の出番!


俺は女の子に向けて優しく微笑んだ。


「ねぇ、きみ。チームは組めないけど、俺がいいものを提供してあげるよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダンジョンで『スキル屋』はじめました 佐久山 @Sakuyama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ