出版社に勤める女性と、その女性が飼っている不定形な何かの日常。
何かは形を変える事が出来る物体であり、普段は女性の為に舐めると甘いショタの姿で家に居る……この話ってコズミックホラーなんだけど、よくよく考えたら女性が物凄く変態でやべぇなこいつってなりました。
いやだってショタを飼ってるんだよ?家事をしてくれて自分を気遣ってくれてだいたいのお願いは聞いてくれるショタ。
不定形の何かをこうまで自分の都合の良い様に扱えるその精神が凄いですね。最後に『お腹の子になってもらう』って考えているんですけど、これはつまり不定形の何かを胎内に入れるつもりって事でしょ?覚悟決まりすぎでやばい。
そのうち何か側が人類を支配する環境になるんでしょうが、それでもこの主人公みたいな人間が居る限りは好き勝手にはされないんだろうという気がします。超人とはこういう人の事を指すのかもしれない。
日夜バリバリ働くお疲れ気味の女性カナエと、その家に暮らす曰く名状しがたい同居人のお話。
同居人、というか同居生物というべきか、とにかくこの居候のユーゴくんがなかなかの曲者です。作品紹介から引用するのであれば、『七色に蠢く原形質の不定形な』生物とのこと。作中では人の姿(それも十歳程度の愛らしい男児の姿)であることが多いのですが、まあとにかく人ならざる何者かであることには間違いありません。
ふたりの関係というか、その生き方やあり方に惹かれます。甘く親密な協力関係、異種婚姻譚のような雰囲気を匂わせながら、でもどうしようもなく存在する隔絶のような何か。ユーゴに一個の人格を見出しながらも、でも同時にそれが彼の持つ『どこまでも都合のいい便利な性質』ゆえのものだと認識している、その諦観や割り切りにも似た絶妙な感情。
種が異なるのではなく、もっと大きな違い。実存としての層そのものが食い違っているような違和感を抱かせる、そんな理想のパートナーとの甘い同居生活。優しく幸せな風景の奥底にひっそりと潜む、冷えた芯のような恐怖を味わわせてくれる作品でした。これが幸福であることこそが恐ろしく、恐ろしかろうと幸福には違いない、というこの、うまく言えないんですけど絶対混ざっちゃいけないところが溶け合っちゃっているような感じ。好きです。