If 政府が給付金の代わりにお刺身の商品券を配布したら国民全員がアニサキスにあたって国が滅んだぞ

もう白湯しか飲めない

チート能力で世界を創造する

「お主が孤児として生まれ、小中高いじめられ、就職先が全部アホのバイトテロで倒産し、女の子と仲良くなったと思ったら色黒のおっさんたちとの乱交ビデオを自宅に送られ、誰でもいいからとナイフ片手に町へと飛び出したら同じような理由でナイフ持ってる奴と最初に出くわして、タイマンの格闘に縺れ込んだ結果、仲良く高齢者ドライバーに轢き殺されて死んだ男じゃな?」

「はい」

「神の立場から言うのもアレじゃが凄い人生じゃな。ジェットコースターみたいじゃ」

「ええ、まぁ...」

神と名乗る少女に対して俺は曖昧な返答をしたが心の中ではキレていた。人の人生はレジャーランドの乗り物ではない。


「実はお主が死んだ一年後に日本は寄生虫の食中毒で滅んだ」

「ええ...?」

「その二年後、なんだかんだあって全人類は滅んだ」

「何があったんですか!?」

「そっちは洒落にならん事があったんじゃ」


夏祭りで見る着物を着た少女は、人ならざる者の証明かのごときその大きな狐の尾を揺らしながら、こちらを指さした。

「そこでじゃ、お主に新しい世界を創造してもらおうと思いここに呼んだのじゃ!」

「はあ...」

どこまでも続く暗闇の中でスポットライトのような光に照らされていた俺は、その目の前で同じく光の中にいる少女の言葉に対して納得がいかなかった。


「あの、なんで俺なんですか?もっと適役がいると思うんですけど、ほかに立派な人が」

「わしは勉強だけして偉くなった奴とか金持ってる奴に世界とか国を任せていいかと言われると違うと思うんじゃ。ぶっちゃけ政治家とかいらんじゃろ、世の中」

「政治に対しての考えが浅すぎません?」

街頭インタビューのホステスでもこれより立派な発言をするだろと俺は思った。


「兎も角じゃ、お主みたいな奴の方がいいと思って、おぬしに世界創造の力を授けたのじゃ!見よ!」

少女が大きく手を広げるとスポットライトの光が瞬く間に大きくなり、辺り一面の砂漠が俺たちの周りに果てなく広がった。


「まずわしが無の世界として鳥取砂丘をベースとした広大な土地を創った。お主も低予算ファンタジー邦画の砂漠風景としてみたことがあるじゃろ?」

「見渡す限り砂しかないですね...。それで、俺はなにができるんですか?」

「試しに無心で右手を挙げてみろ。ノーコストで野良猪が生成できる」

言われて右手を挙げるとそこには猪が現れていた。


「害獣じゃないですか!」

「かわいいじゃろーが!つべこべ言わずに三匹ほど生み出してみろ」

言われるままに俺は猪を計三匹生み出した。どれもウリボーみたいな可愛い猪ではなく、でかい獣だった。


「出来たようじゃな。では三匹が一つになるようなイメージをしながら右手を前に出して握ってみろ。合体して新たなものが生まれるぞ」

「す、すごいですね...、なんか突然寄り添いあったと思ったら粘土みたいに混ざり合いましたよ」

「教育番組の粘土アニメみたいで懐かしいし、楽しいじゃろ」

「いやリアルに目の前で見るとえぐいだけですよこれ、なんか内臓見えてますし...」

気付くと猪たちは跡形もなく消え、20階建ての高層ビルがそこにはあった。


「でっか!脈略もないし!」

「こういったようにクラフトゲームの要領でお主には世界を創造してもらう」

「こんな意味不明なクラフトゲームありませんよ!」

「マイ〇ラとかこんなんじゃなかったの?」

「そんなわけないじゃないですか...、そもそもこれはどういう建物なんですか?」

「永久(とわ)の砂丘にそびえる、天まで届く楽園(オアシス)じゃ」

「奇天烈な売り文句を聞いてるわけじゃないんですよ」


「兎も角、猪を合体させることでお主にはまず人間を創造してもらいたいんじゃ。十匹くらい合体すれば三人はできるぞ」

「マジでシステムが意味不明ですね...」

「おい、合体中にイメージすればお主好みの“おなご”だって簡単に作れるんじゃけぇの、もっと喜べ」

「は、はぁ」

とりあえず俺は人間を生み出すことにした。言われた通りにしてみると簡単に成功した。


「黒シャツとジーパンの男、大きめの白セーターにホットパンツで小麦肌に足太のおなご、青シャツとジーパンの男、か」

「できましたね」

「両端の男たちに魂がこもってないんじゃが?」

「そうですか?」

「真ん中が本命じゃろ、隠すな」

「そんなことは」

「エロ本を興味ない一般漫画でサンドイッチして購入するタイプじゃん」

「いやその、自分を客観視したときに、普通のやつで挟んどかないと落ち着かないというか...」

「小心者すぎてシンプルに嫌な男じゃのお主。好みの女三人くらい作ってハーレムする度量はないんか?逆になんかきしょいわ」

世界創造するんだから男がある程度の人数いるだろと反論したかったが、少女とはいえ女性に軽蔑されたことが普通に悲しかったので何も言えなかった。


いろいろと生み出した結果、別に好みの世界を創造したいわけじゃなかったので俺が生きてた頃と変わらない世界ができた。その世界で俺は独り身で平凡に暮らした。おおよそはいつも通りの世界だったが、人間同士が密着すると低確率で合体して二階建ての家電量販店が生まれるバグがあったので、俺は人々の無意識の中にソーシャルディスタンスという概念を刷り込ませることで事なきを得た。

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If 政府が給付金の代わりにお刺身の商品券を配布したら国民全員がアニサキスにあたって国が滅んだぞ もう白湯しか飲めない @sayusayu5959

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