妖怪物の昔話としてとてもよく出来ていて、そのまま古文の妖怪話集に載ってそうな作品でした。
化物が上手く人に擬態しているも、その形態から戦闘には不向き。というのが正しく化物っぽくて良かったです。そういう生態なんだから仕方ない。
最後にすんなりと解決してないのもいいですね。『こういう事があるから気をつけよう』という教訓的な話にも読めます。
第二回こむら川小説大賞のテーマの『擬態』も二重にかけてあり、この完成度の作品を一番槍で仕上げるのは流石!
後、藩主の槍捌きと偽教授さんが自主企画の一番槍なのがシンクロしていて、作品外で少しニヤリとしました。
人に化けて社会に潜む化物「胴の面」と、それを退治しようと頑張るお侍さんのお話。
時代物であり伝記物であり怪談話といった趣の短編で、するすると釣り込まれるみたいに最後まで読みました。淡々としているようでいて雰囲気のある文体、なんだか語り部の口から聞かされているような感覚の読み心地が、しっかり物語の世界に浸らせてくれます。
舞台はとある藩のとある城中、人間のフリをしてどこかに紛れているという妖怪・胴の面を、さてどうやって見つけて討伐するか、という筋。説明すべき内容というか、最低限お話を理解するための情報だけでも結構複雑なはずなのですが(少なくとも約3,000文字という分量を考えると結構大変なことだと思います)、しかし全然そう感じさせない堅実な話の組み立てと、話運びのうまさの光る作品でした。
最後のオチというかその後の締め方というか、余韻を残すような終わり方が好きです。