第33話 ミミック VS 極天のガレリア(2章完)

「貴様……どうやって……」

 あ、こいつ本気で驚いてるな。

 バケモノみたいな顔で表情とかはよくわかんないけど、雰囲気でわかる。

「召喚してもらった」

「なんだと!?」

 種を明かしてしまえばなんてことはない。

 スアマちゃんが街に行って、モンスター使いのドルホイさんに私を召喚するように頼んだのだ。

 そう。私は、あいつと一度だけ、一分だけの召喚に応じる契約を結んでいるのだ!

 さすがに最初のメテオを喰らってる最中には間に合わなかったけど、どうにかメテオシャワーの発動までには間に合ったってわけ。

 なので、けっきょく助かったのはいろいろな偶然が重なった結果なのだ。

 スアマちゃんが咄嗟にこの作戦を思いついて、街に辿り着けて、ドルホイさんが協力してくれて、メテオシャワー発動に間に合って、召喚期限の一分後にはメテオシャワーの脅威がおさまっていて。

 一つでもうまくいってなかったら、私は跡形もなく消え去っていただろう。

「馬鹿なのか貴様? のこのことあらわれおって」

 あ、なんか呆れられてる。

 そりゃね。別にわざわざこいつの前にあらわれる必要は全然なかった。

 メテオシャワーで死んだと思われてるわけなんだから、召喚時間が終わって元の場所に戻ってきて、それで無事だったのならとっとと逃げだせばいいのだ。

 それが賢い選択だってのはわかる。

 けどさ。

 けれど。

 ここまでやられて、おめおめと逃げだすってありえなくない?

 この辺はもうなんていうか、理屈じゃないよね。

 やられたらやりかえす! 絶対ぶっころしてやるっていう、モンスターの本能的なあれだ。

「我は極天のガレリア。貴様如きが、敵う相手とでも思ったか?」

「いやー、案外いけるんじゃない? だってあんた魔法使いでしょ? 近接専門の私をどうにかできるの?」

 メテオにメテオシャワー。確かに威力はすごい。けど、そんなものほいほいと連発できるわけはないはずなのだ。

 そして、他の魔法で私を倒せるのなら最初からそうしているはず。

 ……だよね?

「……まさか貴様、我がメテオしか使えぬとでも思っているのか? あれは、ノートンへの手向けとしてあえて使ったまでのこと」

 ガレリアが毛むくじゃらの右手を挙げる。するとそこには火球が生まれた。直径二メートルほどの業火球。

 あ、やばい感じの奴だ、これ。

「それに、先ほどの爆裂は我に通用しなかったな? 我は防御など特に行いはしなかったが?」

「まあ、あれだ。そりゃやってみなけりゃわかんないでしょ」

 と、私が言い終わるのが合図になったのか。

 ガレリアが火球を放つ。

 これまでの経験上、魔法は避けられない。

「七星連武!」

 だが! 私にはさっき覚えたばかりのスキルがある!

 これは複数の敵の間を駆け回って七人を一気に攻撃する技。が、相手が一人なら、これは七連続攻撃となるのだ!

 神速の踏み込みは、火球が加速する前に、その下を潜り抜けてのガレリアへの接敵を可能とした。

 爆裂脚!

 喰らわせながら駆け抜ける。火球はあさっての方向に飛んでいく。

 そして、速度はそのままに、Uターン!

 背後から、側面から。私はガレリアの周囲を縦横無尽に駆けながら爆裂脚を喰らわせる。

 普通なら爆裂脚は、一度に一回しか発動しない。

 けど七星連武には、組み合わせた技を七連撃終了後にまとめて発動させる効果がある。つまり、爆裂脚での七回攻撃が可能となるのだ。

「喰らえ! 七星爆裂脚!」

 最後の一撃を加えて離脱。

 こいつは一度の爆裂には耐えた。

 けど、七発同時の爆裂は?

 一瞬の間。


 ドドドドドドドッ!


 その音はガレリアの身体の中から聞こえてきた。

 同時にガレリアの身体が大きく歪に膨れあがる。

 内部の爆発をどうにか抑え込もうとしているのだ。


 ドッカーン!


 そして、ガレリアは派手に爆裂した。

 あー……よかったー。

 さすがにもう限界だったのだ。

 ポーションは使い切ったし、自動回復に使うソウルも底をつきかけていた。

 あ、そうそう。こいつも回復するかもしんないよね。

 と、あたりを見回してみる。

 あった。

 ガレリアの頭。

 近くの木に角が突き刺さってる。

「……貴様……」

 うおっ! まだ生きてる!

 けど、虫の息って感じだ。さすがにこっから復活とかはないだろう。

「残念でしたー! いやー、メテオ喰らってる最中にスキル習得しちゃってさー! それなかったら負けてたかもねー!」

「……災厄の箱め……貴様にはわずかにでも戦いを経験させるべきではなかった……小手調べなどと馬鹿なことを……」

 それだけ言ってガレリアは黙り込んだ。

 うん。

 勝った! やったね!

 さてと。で、こっからどうするか。もう敵はいないはずだけど。

 まあ、街に行ってスアマちゃんと合流してみよう。


  *****


「ほ、本当にもう一度契約してくださるので?」

 と、ドルホイさんはへこへことしていた。

 ここはドルホイさんの屋敷の応接室。

 私とスアマちゃんは並んでソファに座ってて、ドルホイさんは向かい側に座ってるって状況だ。

「うん。今回は無駄に使わせちゃったわけだから、もちろんその分の補填はするよ。ついでに回数は二回までで、一回あたり五分にしてあげよう」

「おお! ありがとうございます!」

 あ、本気で喜んでる。人間の敵が相手でも気にしてなさそうなのは、モンスター使いだからなのかなぁ。

「いや……しかし、この短期間の間にレベル150とは、いったいどんな修業をなさっておられたんですか?」

「修業かー。メテオを押し返すとか?」

「はあ」

 あ、つまんない冗談だと思われたみたいだ。ちょっとむかつく。

 しかし、レベル150か。

 ガレリアとその一門ってのはかなりの経験値だったはずなので妥当な気もするけど、ソウルを集める指輪をはめてたらもっと上がったのかな。ちょっともったいなかったかも。

「ハルミさんが無事で本当によかったです!」

「いやー、今回はスアマちゃんの機転に助けられたよー」

 つーか、私も召喚のことなんてすっかり忘れてたしな!

 てか、覚えててもスアマちゃんに指示できる状況じゃなかったから、けっきょくはスアマちゃんだよりだったってことだ。

「いえ。モンスターを通さない結界だとしても、召喚で呼べば出られるのかなって思っただけで」

「でも、一分で戻るなら意味ないとか思わなかった?」

「そうですね。でも、召喚のエネルギーはドルホイさん持ちという契約でしたから、ドルホイさんのエネルギーがない状態にしたら、元の場所には戻らないんじゃないかとかも考えました」

 ちょっと怖いな! この子!

 あ、ドルホイさんも引いてる。

「さてと、そろそろ行くかな。わかってるとは思うけど?」

「はい。あなたのことは口外いたしません」

 モンスター使いのことを聞きに来た娘がいたから教えただけ。そんなスタンスでいくつもりらしい。

 屋敷を出て街の外へ。

 特になにごともなくあっさりと脱出完了。

 森で何かあったらしいってことで騒ぎにはなってるけど、それに私たちが関わってるとかはまだバレていないようだ。

「けど、まあ、私を追ってきた奴がいたし、もうそこら辺を出歩いてるミミックがヤバイってのは広まってるのかなー」

 てか、そんなの私以外にいないだろうからバレバレだよね。

「ハルミさん、これからどちらへ向かわれるんですか?」

「うーん、とりあえず闇の森に行ったら情報収集できると思ってたからなー。こっからどうしたもんか」

 けど、このままのこのこと歩いていくのも難しそうだ。

 もうちょっとまともな偽装工作が必要なところかな。

「あの、車椅子を使うというのはどうでしょう? 上半身を女の子にして、下半身を隠してしまえば、そう簡単にはばれないと思います」

「ふむ。車椅子に座ってて、足元を隠してるとなると、わざわざのぞき込もうって奴もそんなにいないか。ついでに義足を見せとくとかしてもいいかも」

 でも、その車椅子を調達するのに、いろいろと手間がかかりそうだ。

 まあ、とにかく最終目的地であるエリモンセンターは北の大陸にある。

「とりあえず北に向かうよー」

 ま、なんとかなるよね!

 ここで考え込んでたってどうしようもないし。

 ということで。

 私たちは北へと向かうことにしたのだった。


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あとがき


ここまでお読みくださってありがとうございます。

とりあえずお話はここまでなので、ハルミさんの冒険はこれからだ! エンドとなっております。

依頼があればもちろん続きは書くのですが、書籍化したところ全然売れなかったんですよね……。

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美脚ミミック、ハルミさん ~転生モンスター異世界成り上がり伝説~ 藤孝剛志 @fujitaka

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