第32話 SIDE:極天のガレリア
メテオが様子見だというのはそのとおりではあるのだが、実際のところガレリアはそれで終わるとも思っていた。
メテオの直撃に耐えられる生物などいるはずがないからだ。
そして、躱すのも難しい。
メテオは召喚魔法だ。その発動の瞬間を読み切ることはほぼ不可能であり、この世界にあらわれた瞬間に、目にも止まらぬ速度で敵に直撃する。
発動したが最後、敵はほぼ即死するという魔法なのだ。
だが、ミミックは耐えた。
躱すよりもより不可能な方法で、メテオを凌いだのだ。
だが、ガレリアは万が一のことを想定していた。
一門の最終奥義であるところのメテオシャワーの発動を準備していたのだ。
まずはメテオを発動し、即座にメテオシャワーの儀式に入っていたのだった。
メテオで終われば、儀式を中断すればいいだけのことで、無駄に魔力を使う程度のリスクしかない。
「さて。メテオシャワーとなると、威力を抑えるほうが難しくなるな」
モンスターを通さない結界はすでに解除していた。今使用しているのは、メテオの威力を外部へと漏らさないための結界だ。
ガレリアとその一門は、気配遮断を解除し、その全ての力を結界の維持に注いでいた。
ドドドドドドドドッ!
結界越しであっても、森と大地を蹂躙する爆音が耳をつんざく。
無数のメテオが一カ所に炸裂し、球形の結界内が閃光で染まる。
発生する衝撃と熱を結界内部にどうにか抑え込んで、影響を局所に限定する。それこそが、この魔法の極意だ。
結界が内部で渦巻く衝撃を吸収し、急速に内部が澄んでいく。
文字どおり、跡形もなくなっていた。
結界内部にあったものは全てが消え失せたのだ。
そこにあったものは衝撃で砕け、高熱で溶け、全てが混ざり合った状態で堆積している。
「ガレリアさま……これ以上は結界の保持が困難です」
一門の者たちが、ガレリアの下へとやってくる。
五十名ほどはいたはずだが、半数以下となっていた。
何人かはミミックにやられ、他はメテオシャワーの儀式中に倒れたのだろう。
これほどの犠牲を出してまで、たかがミミック一体を倒す必要があったのかとは、誰もが思うことだろう。
だが、ガレリアには必要だった。
最強の魔導結社としてのプライドを保つためには、ミミック一体といえども全力で叩きつぶす必要があったのだ。
「余波はほぼ吸収しつくした。結界は解除しろ」
結界が解かれる。途端に熱風が駆け抜けるが、すでに命に関わるほどのものではなくなっていた。
「後始末は任せる」
冒険者の生活の糧でもあるダンジョンを一部とはいえ再生不可能なまでに破壊してしまったし、こんな街の近くで広域破壊魔法を使用したとなれば、各方面からの苦情は避けられないだろう。
だが、そのような諸事に対応するのはガレリアの仕事ではない。
ガレリアの仕事は、魔導の追求に他ならないのだ。
メテオシャワーの実戦運用について考えながら、ガレリアは踵を返した。
「爆裂脚! 爆裂脚! 爆裂脚!」
その瞬間、背後から声が聞こえてきた。まさかとは思うものの、あのミミックの声だ。
ガレリアが振り向くと、おかしな体勢の弟子が飛んできた。思わず受け止める。
ドゴン!
ガレリアの腕の中で弟子が爆発した。
だが、ガレリアは無傷だった。この程度の爆発でダメージを負うほど柔ではないのだ。
そして、弟子の爆発で発生した爆風で、ガレリアにも爆裂属性が付加され、さらなる爆発が発生する。
だが、ガレリアはこれにも耐えた。
モンスターの身体をいくつも取り入れたガレリアの耐久力は、並大抵のものではなかったのだ。
「あー、もう、今回ばっかは死ぬかと思ったよ! やりたい放題やってくれちゃってさぁ! まあ、あれだよ。こっからは私のターンだから!」
残りの弟子たちは無惨な有様になっていた。
爆裂して、血と肉片になり、周囲を真っ赤に染めていたのだ。
そして、その血だまりの中に、ほとんど無傷のミミックが立っていた。
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