超すごい男
デッドコピーたこはち
超・第1話
アルファ・ケンタウリ星系には、惑星を丸々くり抜いて作られたギガ・ナイトクラブがある。そのクラブには銀河中からあらゆる生命体が集まって、地平線が見えないほど広大なダンス・フロアで踊り狂い、消失点まで伸びる長大なバー・カウンターで自身がカクテルになるほど酒を飲みまくっていた。店内では三千億色のレーザー・ビームが飛び交い、天井を埋め尽くすほどミラーボールが吊り下がっている。そこに、一人の男が入店した。
ジョン・バロック。伝説の男である。
彼には『神殺し』『超越者』『死だけを残す男』『ヘルメス・トリスメギストスの三倍偉大な男』『ブラックホールでホッケーをする男』等々、16万通りの異名があったが、それらは彼の凄さを彼の爪先ほども言い表せてはいなかった。しかし、大いなるジョン・バロックは言い表せられないほど素晴らしい男なので、それも仕方のない事だった。本人も全然気にしてはいない。大様なジョン・バロックの心は天の川銀河よりも広かった。
威風堂々たるジョン・バロックは邪悪なメンデレウス星人の皮を剥いで作った漆黒のロングコートをはためかせて、バー・カウンターに座った。メンデレウス星人の皮はあらゆる波長の光を吸収するので、どんな生命体の視覚をもってしても、闇そのものを纏っている様にしか見えないだろう。
「極極濃縮メガコーン・ウイスキー原液をジョッキで」
屈強なジョン・バロックは地獄から響いてくるような超低音でいい、右手でVサインをつくった。
それを聞いたバーテンダーはその二万対ある目を丸くして驚いた。極極濃縮メガコーン・ウイスキー原液というのは、何千倍にも薄めて使うメガコーン・ウイスキー原液を、次元折り畳み技術で四次元的に圧縮したもので、それをジョッキ二杯ともなれば、惑星一つ分ほどの体長を持つ宇宙大ゴリラクジラを百匹くらいは酩酊昏倒させることができる量である。
「二千杯だ」
強壮なジョン・バロックがそういった瞬間、バーテンダーは卒倒した。気を失ったバーテンダーを隣に立っていたバーテンダーが支えた。
「この店にそんな量のアルコールはないわ」
隣の席に座った超妖艶セクシー美女が容貌魁偉なジョン・バロックに話しかけた。その美女の姿といったら、美と愛を産んだアフロディーテが嫉妬に狂うであろうほどの見事さだった。そのどこまでも豊満な胸。どこまでも括れた腰。どこまでも伸びた両足。その全てが大胆にも露わになる血の様に赤いナイトドレス。黄金が霞んでしまうほどに光り輝く金髪。彼女の身体が作った美し過ぎる曲線は、あらゆる曲線美が彼女の身体から生まれたのではないかと見た人すべてに思わせた。
「これで我慢して」
美女がみずみずし過ぎる唇を震わせてそういい、一杯のカクテルをカウンターの天板を滑らせて、精悍なジョン・バロックに寄越した。
慧眼のジョン・バロックは、それだけで獅子を殺せる視線をカクテルに向けた。そのカクテルは隣の美女の唇のように赤かった。大胆不敵なジョン・バロックは一息にそのカクテルを飲み干した。
「名前は?」
豪胆なジョン・バロックは美女に問うた。
「私……?私は
「
「その通り、だって私はあなたの死ですもの」
次の瞬間、ギガ・ナイトクラブに居る五兆六千億の生命体全てが泰然自若なジョン・バロックに銃を向けた。ギガ・ナイトクラブそのものが
鍛え上げられたジョン・バロックは、よろめきながら腰に提げたホルスターからザップ・ガンを抜いた。
正確無比なジョン・バロックは恐るべき早打ちによって、ギガ・ナイトクラブに居る五兆六千億の生命体全てを射殺した。それは星の瞬きほどもない時間で、
額を撃ち抜かれて床に横たわった彼女の右手には
情熱の男、ジョン・バロックは
そこは『空』だった。万物があり、何もなかった。『空』には無限個の世界が泡の様に漂っていた。その姿は海のようであり、脳の神経結合のようでもあった。天衣無縫のジョン・バロックは意を決し、因果の元へと遡った。
そこには
不屈のジョン・バロックは渾身の右ストレートを
最強無敵不倒の男、ジョン・バロックは
英雄ジョン・バロックはあらゆる世界で救世主として迎え入れられ、永遠に全ての宇宙で讃えられた。
超すごい男 デッドコピーたこはち @mizutako8
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