35.転生巫女は気ままに過ごします
まあ、そんなわけで『ラテテイ』はジェイドさんと私の二人が抜けて、ただのCランク二人のパーティになったんだけれど、二人とも国外に行くことはなかった。
アイリーンは私が入る前と同じように、放浪生活を送りたかったみたいだけれど、ユリウスさんにあの手この手使われ、いつの間にか一代限りの爵位まで与えられていた。いつの間にか“賢侯爵”と呼ばれていて、宰相となったユリウスさんの右腕となって日々王宮で働いていた。
ミミィもまた奴隷に逆戻り――――なんていうことはなく、今は王都にある公営ギルドの受付嬢として働いている。そこで働く姿がかわいらしく、王都のギルド経由で仕事を受注する人が増えたとかなんとか。
私生活ではレオンさんと結婚したらしく、その結婚式は盛大なものだったようだ。
ちなみに私が『厄除け』をはじめとした希少スキルを持っていると聞いた後、うらやましそうな眼差しだったので、(上の許可を得たうえで)『良縁成就』をかけておいた。これで彼女に悪い縁がやってくることはないだろう。
それで、私はというと。
もちろんジェイドさんと結婚した。
結婚後に王宮で歩くと、女性からは少々の羨望の眼差し、ほかの人たちからは平民上がりの小娘でと白い目で見られることになってしまったのは言うまでもない。
まあ、そんなのは織り込み済みだ。
王宮浄化師という身分が私をしっかりと支えてくれた。
ところでジェイドさんの秘密――ジェイドさんのスキルを利用しようとした両親を殺したという話だけれど、あれは半分事実で半分嘘らしい。結婚の挨拶をするために王都にジェーンさんを呼び寄せたところ、同席したユリウスさんから真実を聞かされたのだ。
どうやら、両親が利用しようとしたのは
その利用しようとした両親は魔力研究のときに起きた爆発事故で亡くなったらしい。もっとも、本当に偶然だったようだけれど。
だから、魔王の言っていたのはある意味で正しく、ある意味で間違っていたのだ。
ローザさんに事の次第を報告すると、それはよかったと涙ぐんでいた。きっと、彼女の鉱山にまた注文が来るだろう。そっと『厄除け』を付与しておいた。私の両親にも結婚の挨拶をするために、ビリウの村に戻ってきたんだけれど――――
「ミコ、元気だったか?」
「しっかりとした肉付きになったわね!」
両親は喜んでくれた。どうやら昔から人一倍、食べるくせにしっかりとした筋肉がついていなかったのを、両親は心配していたようで、私の体をぺちぺちと触ってくる。なんとなく懐かしい気がした。
私がいない二年の間に、父親の武器工房はすでにお弟子さんをとっていて、ちゃんと次の世代につなげていくことができるようだ。よかった。
一応スキルについて、両親とそのお弟子さんにだけ説明した。三人ともびっくりしていたけれど、素直に喜んでくれた。
ローザさんのところから産出されるアイアンボートをまた使うようにお願いして、村を出るとき、私たちに父親が作ってくれた短剣をそれぞれプレゼントしてくれた。
ジェイドさんとお揃いのものって今まで、持ったことがなかったから、両親からのプレゼントなんだし、大切に使わせてもらおう。
「じゃあ、次の街に行こうか」
「はい!」
私たちは今日も平和な国の魔物やよどみの浄化作業をする。
私が生きている間は、別の魔王の封印が解けないことを祈りながら。
* * * * * * *
ある場所にて――――
『やぁ、ガープ。“彼女”の封印は相当効いたみたいだねぇ』
それは己を嘲笑うように話しかけてきた。
「人聞きが悪いな。私は自ら彼女の封印を望んだ」
『へぇ、あのガープが望むとはねぇ』
声の主は己になにを言いたいのか、見当がつかなかった。
『彼女はこの世界にうまいことなじんだし、君が作りだした魔物を退けて、魔王ガープという存在を封印した』
「お前は気づいていたのか?」
奴は己の元上官であり、己を一時期支配下におさめていた奴だ。
己がなにを考えていたのかお見通しだったのだろう。
『そりゃそうさ。
声は聞こえないし、姿も見えないが、これは絶対に怒っている声だろう。
『だから、君に対抗するために彼女を呼んだのさ』
声の主はじゃあねと言って気配を消した。
『君を片づけ終わったから、今度はボクの番だよ。ミコ・ダルミアン』
転生巫女は『厄除け』スキルを持っているようです ~神様がくれたのはとんでもないものでした!?〜 鶯埜 餡 @ann841611
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