第4話:武器の種類、用途について(ロングソード編)
今度はロングソードについて書いていきます。ではまずロングソードとは何か。
場上から敵を斬る為の長い剣、ロングソードです。
刃渡り100cm超、全長150cm前後、片手でも両手でも扱えるバスタードソードの別名、これもロングソードです。
ショートソードではない長めの刀剣。これもロングソードです。
結構、定義の幅が広いロングソードですが、今回は『片手でも両手でも扱える長剣』としてのロングソードについて。
重く分厚いロングソードは、西洋の、戦に際して鎧を着込む事が一般的だった地域で使われていました。チェーンメイルを力任せに切り裂き、それが叶わずとも重量によって高められた打撃力によって敵を転倒、負傷、絶命させる。
もっとも、鋳造技術の発展によってプレートアーマーが普及すると、流石に力任せにぶった切る事は出来なくなります。そうなると、ロングソードは長く、ほどほどの重さで、鋭い――つまり刺突に優れた剣に変貌していきます。
一口にロングソードと言っても、プレートアーマー誕生以前と以後では性質が異なる訳です。つまり巨大な魔物がいる異世界では、ロングソードは恐らくプレートアーマー誕生以後のような、刺突に適したものが普及しているはずって事ですね。
いや、まぁ、ドラゴンの尻尾を一薙ぎで斬り落とす剣士がいるような世界ならその限りじゃないんですが。
さておきロングソードの用途、用法は相手を鎧ごと叩き斬る。殴り倒す。鎧の隙間を狙って突き刺す。となります。
ですがそれはあくまで相手が鎧を装備している場合の話です。
相手が鎧を着ていない場合は、また違った使用法があります。それはブレードで鎧が容易く切り裂けるような異世界においても同様でしょう。
相手が防具を着ていない場合、ロングソードはその重さを活かした強烈な斬撃を放つ必要はあまりありません。刀やサーベルと同様、相手の首や腕を斬り飛ばさなくても、急所をほんの少し斬りつけるだけで相手を殺傷出来るからです。
ただし、その為のアプローチの方法は、刀やサーベルとは少し異なります。
西洋剣術には、日本剣術には(恐らく)存在しない『バインド』という概念があります。鍔迫り合いの事じゃん? とか思う方もいるかもしれませんが、ちょっと違います。
バインドとは、剣と剣が触れ合った状態です。その接点が鍔元であれば鍔迫り合いですが……バインドによる刃の接点は、状況によって鍔元にも剣先にも変化します。
バインド状態の攻防は、端的に言えば『殺されないように殺す』為の動作になります。より物理的な表現をするなら『相手の剣先が自分の体に向かないように、相手の刃が自分の体に触れないように、自分の剣を相手に当てる』為の動作です。
つまり、例えば剣士Aと剣士Bがいたとします。
Aが上段からの打ち下ろしを放ち、それをBが、剣を頭上に掲げる形で防御。
ここでバインドが発生し、その攻防が始まります。
Bは打ち下ろしを防ぎつつ、受けに用いた剣の先端をAに向け、Aの刃に滑らせるように、首から胸めがけて突きを放つ。
こうすると、Bは自分の剣でAの刃を制しつつ、Aを突き殺す事が可能になります。
逆にAは迫る刺突を鍔元で左へ押しのけつつ、剣先でBの腕か首を切り払う事で、防御と攻撃を両立出来ます。刃渡りが長いが故に、鍔元で相手の刃を制しつつ、剣先を攻撃に用いる事が出来るのです。
これが、『殺されないように殺す』バインドの技術です。
西洋……というかドイツ剣術のこのバインドとその攻防は非常に洗練された技術と言えます。決して相討ちになる事なく、敵を殺傷可能だからです。
単なるチャンバラでは、相手の頭をかち割ったけど自分も腹を切り裂かれて致命傷……なんて事にもなり得ますが、バインドによる攻防ではそんな事は起こり得ません。強い方が一方的に勝つ。その為の技術です。カッコよくないですか?
ぶっちゃけ奥深すぎて描写するのは一苦労な技術なんですが、まぁ、知っていれば役立つ事もあるんじゃないでしょうか。
バトルテクニック備忘録 ぼくです @boku-desu
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