真のドラキュラ城 ポエナリ城

 ポエナリ城はアルジェシュ渓谷の山上に建つ難攻不落の要塞だ。ブラン城はドラキュラ城として有名だが、じつはこのポエナリ城こそ真のドラキュラ城なのだ。

 城は十三世紀にワラキア人によって建設され、一度は放棄されていたが、十五世紀にヴラド公が再建したとされている。


 カーブを描く道路から見上げると、山頂に煉瓦造りの城壁が見える。城までは1500段弱の階段で上ることができ、廃墟の城壁を見学することができる。

 ポエナリ城には二度訪問した。

 一度目は勝手に登って良かったが、二度目の訪問時には熊が出没するため、ガイドと一緒に登るよう指示された。


 実際、熊出没注意の看板が出ており、肝を冷やした。

 もちろん出会うことが無かったが、ガイドの話によれば身長はそう高くない小熊が出るのだという。

 いや、その小熊のバックに大きいのいるのが定石だからな・・・

 ということで、ドキドキしていたが熊に出会ったことはない。


 山頂付近につくと、串刺しにしたマネキンのオブジェや断頭台が設置してあった。こうしたサービスは観光客を喜ばせるものだろうが、ちょっと拍子抜けしてしまった。


 城といってもブラン城やペレシュ城のような豪華な「お城」ではなく、砦というイメージだ。煉瓦の壁が残るだけのまさに廃墟。しかし、ドラキュラ好きとしてはこの廃墟がたまらなく感慨深い。そこに立っただけで感動に打ち震えたほどだ。


 この城には血腥い伝説がある。

 あるとき、ヴラド公が地貫貴族を集めて豪勢な食卓を囲んでいた。そこでお前たちは今までに何人の君主に仕えたか、と尋ねた。貴族たちはこれまでに仕えた君主の数を言い合った。

「お前たちのような奴らが国を滅ぼすのだ」

 一定の数以上の君主に仕えた貴族を捕え、着の身着のまま山上要塞の建設のため、強制労働させた。パーティのための豪奢な服は擦り切れ、過酷な労働に従事させられた貴族たちは次々に命を落とした。


 また、城にトルコ軍が攻めてきた。ヴラドの妃はそれを悲観して城から身を投げた。そのため、下を流れるアルジェシュ川は王妃の川と呼ばれている。

 このエピソードは映画「ブラムストーカーズドラキュラ」でもアレンジして使われている。


 ポエナリ城はドラキュラ伝説を知れば、絶対に訪問したい場所のひとつだ。

 散策が済んだら赤い屋根のレストランで食事を取るといい。レストランにはヴラドの胸像や肖像が置いてあり、テンションが上がる。

 余談だが、人間よりも大きな熊の毛皮が展示してあったのには心底驚いた。

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ドラキュラ伝説紀行 神崎あきら @akatuki_kz

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