第7話

 水色の光が瞬き、煙の中から元の姿の藤原が現れた。


 皆の間に安堵の空気が流れた。


「やれやれです…」


「な、なんてことですの…」


 一人九瑛さんが無念そうに項垂れている。


「九瑛さん…一体どうしてこんなことを…」


 九瑛さんは躊躇うようなそぶりを見せながらも言った。


「う、羨ましかったんですの…こんなに面白い小説を書ける人ばかりの本物川文芸部で自分も認められることが出来たらって…!」


「それで藤原をゴリラに…?」


「埼玉ちゃんをゴリラにすることで本物川文芸部に失われた伝説を顕現させれば私は本物川文芸部に認めてもらえると思ったのです…こんな私を…どうか愚かと笑ってくださいまし…」


「九瑛さん!」


 私は九瑛さんの両肩をぐっと掴んだ。


 正直、九瑛さんがどうしてこんなことをしたのはまだ分からない。それでもこれだけは伝えたかった。


「九瑛さんの短編小説…とてもよかった」


「そ、そんな…」


「ぼくも神崎さんに同意です」


「い、イサキさん…」


「ゴリラなんかなくたってこの8,000字は紛れもなく君の眩いばかりの努力の証です…そのことを卑下する必要はどこにもありません」


「う、うわあああああああ」


 九瑛さんの目からぽろぽろと涙が零れる。


 いつも気丈で優雅に振舞っていた九瑛さんが初めて流した等身大の涙。


 その涙は…とても綺麗だった。


 



 こうして私たちの闘いは終わりをつげ、部員たちは全員無事脱稿を果たしたのだった。




 「ううん…」


 「藤原!目を覚ましたのか!」


 「うう…ひなたん…なんか心なしか腕毛が濃くなってる…?」


  知るか!!


  ~完~ 

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神崎ひなたの受難 藤原×神崎ss〜next ecstasy〜 藤原埼玉 @saitamafujiwara

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