8話だったにゃん⁉︎ クリスマスのデート? 前編のはず
「お兄ちゃん、今日、ちょっと帰りが遅くなる」
わたしの
あ、姫君というのは、わたしの、現在の飼い主、
この姫君、わたしに優しいし、よく遊んでくれるし、いつもご飯をくれるし、それに、なんと言ってもかわいいのだ。わたしの次、だがな。
まぁ、ついでだから、紹介だけはしといてやるか? じゃないといつまでも不貞腐れてくれるんだ。メンドくさいったら、ありゃしない。
下僕とは、
「ん? どっか行くのか?」
「うん、学校終わったら……、ちょっとね」
あれ? 姫君の目がちょっと泳いでるぞ。なんか隠してんのか? 下僕はそこんとこ気づいてんのかな?
まぁ、いいや。わたしがついていくんだから、なんとかなんだろ。
そんなことを考えながら、朝のカリカリを齧っていた。
優希が、食べ終えた食器を片づけてる時、リビングのほうから、微かな、本当に微かなまたたびの匂いが漂ってきた。
お腹いっぱいだったはずのわたしでさえ、本能には抗えず、つられるようにしてリビングに足を踏み入れた。イヤ、踏み入れてしまった。
その瞬間、わたしの体が浮き上がった。
下僕が、わたしの脇を手で捕まえている。更に持ち上げられ、後ろ足が、びろ〜んと伸びる。真っ白なお腹も、無防備にべろ〜んと丸見えだ。
毎度のことだが、わたしは、花も恥じらう女の子なんだぞ。
おいっ、下僕、なんとか言いやがれっ! わたしが、自慢の爪を一閃してやろうと思っていると、そこには、下僕の情けない顔があった。
「ユキよぉ、さっきの優希、なんか隠してるよな? 目も泳いでたし」
あぁ、下僕も気づいてたのか。まぁ、シスコン兄貴とブラコン姫君だから、気づかないわけはないと思ってたが……。
なんで、
「なぁ、ユキ? 優希ってば、どこ行くんだろう? 誰と行くんかな? なにすんのかなぁ?」
下僕のこんなにも情けない顔、初めて見たわ。
わたしを辱めた仕返しをしちゃうか? そんな腹黒いことを考えついたわたしは、下僕を気にしないフリをして、独り言のように呟いた。
「どこ行くって、遊びに行くんだろ? クリスマスイブだぜ。誰とって、男に決まってんだろ? なにって、デートだよデート! 優希はかわいいんだよ! わたしの次だがな! そんなかわいい姫さまに王子さまがいねぇわけねぇだろ! 妹離れしろよ、そろそろ!」
あ、泣いた。わたしの厳しい言葉に肩が震えてる。なんだよ、弄り甲斐のないヤツだな。
「なぁ、陽希ぃ、優希にはわたしがついてっから、そんな心配すんなよ」
あまりの落ち込みぶりにわたしから妥協案を示した。陽希が、わたしを見てる。ちょっと甘やかしすぎちまったか?
「ユキ、おまえに重大な任務を与える」
うわぁ、イヤな予感しかしねぇ。わたしの聞きたくないアピールを、完全に無視して、下僕はわたしをまた抱き上げた。
だからぁっ、わたしは、花も恥じらう女の子なんだ。
「優希のことをしっかり護衛してくれ。そして、相手が誰なのか、詳しく報告するんだ。成功の暁には、おまえのご飯がグレードアップする」
「イヤだよ、そんな密告みたいな真似。それに、わたしは、カリカリが好きなんだからいいんだよ。まぁ、護衛くらいはしてやるけど……」
あ、また、肩を落とした。もう、つきあってられん。
「ユキ、学校行くよぉ」
「あ、優希が呼んでるから、先、行くぞ」
わたしは、小さく
ねこみみ日和 浅葱 ひな @asagihina
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