第5話

「はぁ、はぁ」


息が荒い、それもそのはず目の前で起きたことが衝撃的すぎてまだ幼い〇〇にはとても受け入れられるものではなかった。


息を整えようと深呼吸をする。

しかし、独特な匂いを感じた瞬間に吐き気を催しそのまま戻してしまう。体の中は空だったのだろう、戻した中に血液が混ざり込んでいた。


怖い怖い怖い怖い


私には何もできない。目の前で起きたことに頭の中に入ってこない。目に映っているもののはずなのに何も見えない


小さな出来心だった、○○にかまってもらいたくて気にしてもらいたくて、


今までみたいに頭をなでてほしかった


だからみんなにこういった


「○○のお父さんとお母さんいないんだ。だから普通じゃないんだよ」


そこからの毎日で○○は弱っていった。みんなに話しかけても無視される。近づくと距離を開けられる。そんな毎日だった。私は近づこうとした、でも周りのみんなが私と○○を遠ざけた。

聞いた話だと○○の両親は犯罪を犯して警察に捕まっているとか、○○が私をいつも脅していただとかでたらめなことばかり、私は否定した、何度も何度も。でも噂は止まらない、SNSで拡散され全く関係のない人がひどい言葉をなげかけてくる。


とうとう○○は学校に来なくなった。私は何度も会いに行こうとしてそれを止められた。お父さんとお母さんは娘がしてしまったことに対してとても怒っていた。でももう私には何も聞こえない。当たり前がなくなってしまった世界がこんなにも怖い場所だっただなんて。

○○の家に謝りに行ったが家族が合わせてくれることはなかった。そこで驚いたのは感謝さえされたことだ。やっということを聞くようになっただの、生意気な態度がなくなっただの散々だった。私のお父さんとお母さんは普段優しい、でもいまは○○の家族に対して鬼のような顔で怒っている。


そこから○○を見ることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮面のはずし方を忘れて 晴信 @REKTO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ