第4話
「おかえりなさい」
「綾さん。ただいまです」
生徒会室の片付けが終わると外はもう夕暮れ、仕方なく生徒会室での仕事はまた今度ということになった。まぁ、自分の分は持ち帰ってきたけど。掃除中から惚けている大池先輩を家まで送り自分は駅に向かう。この高校から家までは結構遠く、電車通学をしている。そのために恵とは安全のためにいつも一緒に帰宅している。
「晴くんは今日生徒会の仕事だったんでしょ?お疲れ様です。」
「ありがとうございます。ただ、まだ仕事が終わらなくて今から夕食ってすぐ食べられますか?」
「えぇ、作ってからちょっと時間が経ったから温め直すわ。その間にお風呂に入ってきたら?」
「ありがとうございます。」
家族としては少し堅い話し方かもしれないが素がこれなので仕方ない。敬語はいつから使っているかはっきり覚えてない。もしかしたら初めからなのかもしれないしもう癖なので周りも慣れてきている。たまに寂しそうな表情をしているため申し訳なく感じてはいるんだけどな
風呂からあがると料理が並べられていた。今日のメインは鳥だ。綾さんはゆっくり食べて食器は流しに置いておいてね、とだけ伝えると自分の部屋に戻っていった。すでに夜の10時過ぎ、涼さんや恵もすでに食べ終わっていて綾さんだけ俺の帰りを待っていてくれたようだ。涼さんと綾さんは家に帰ってからも仕事があるのでおそらく2人とも作業部屋にいるんだろう。恵は自分の部屋で課題でもしてるかな
晴は食事をさっさと済ませると食器は洗い、棚に戻しておいた。
「なぁ、なんでここにいるんだ?」
自分の部屋の扉をあけた晴は部屋を間違えたかと思い一度外に出て確認した。
なぜかは分からないが恵が俺の机で勉強をしているからだ。
「自分の部屋よりも晴さんの部屋の方が集中できるんです。べつにベットに寝てたわけでもないですし勉強机くらい使ってもいいじゃないですか。」
「まぁそうなんだが。じゃあ俺は生徒会の仕事あるから勉強が終わったらリビングまで呼びにきてくれ」
仕方なくこの部屋は妹に明け渡し必要なものだけ持ってリビングに戻ろうとする
「ま、待ってください。生徒会の仕事って放課後終わったんじゃないんですか?」
なんだか少し怒っている様子の恵が聞いてきた。まぁ、あんまり大池先輩のことを悪くいうわけにはいかないからなぁ
「ちょっと俺の作業が遅くて先輩に手伝ってもらってた、でも時間的にこれ以上は申し訳ないということで後は家でってことにして帰ってきたってわけ」
そうですか、と明らかに怪しんでいる様子だ
「ま、そういうことで終わったら教えてくれ」
それだけ言うとさっさとリビングに向かった。ここで長居するとしつこく聞かれそうだし…
とりあえずリビングの机に書類を広げて分類をする。流石に県立の高校なので書類といってもほとんどすることはイベント関係や部活動の内容などで決定権は先生方なので生徒と教員の架け橋として最低限の修正程度の内容だ。しかしうちの高校は特殊であり学校から予算が与えられ、それを分配する権利や施設の管理なども任されている。少しルーズすぎる気もしなくもないが大学では行われていることなので先進的と言えば先進的なのかもしれない。
「晴さん、お疲れ様です。勉強もひと段落したので部屋を出ますね。あと、お茶とお菓子を用意したので休憩がてらに飲んでください」
「ん?あー。もう12時か。ありがとう。でもお菓子は気を使いすぎだよ。いただくけども」
作業を始めて気づけば1日が終わっていた。
ちょっとキリが悪いので一度恵が用意してくれたお茶とお菓子で休憩するか
用意されたのは2人ぶん、なるほど。恵も一緒に休憩するわけか、
「恵、お前は早く寝たほうがいいんじゃないか?夜も遅いし」
「やです。晴さんがまだ仕事しているのに私だけ休むわけにはいきません。」
「あんまり夜遅くまで起きるのは健康にも悪いし美容にも悪いだろ?」
「確かにそうですね。では晴さんが早く仕事を終わらせないといけないですね。」
そう言って恵は俺の真横に座りニコッと笑う
なるほど、俺に早く寝かせることが目的か
仕事はすべて終わらせておきたかったが恵がその間起きてるのは流石にまずい。
「せっかく美人なんだから…」
ビクッ
「やっぱり私はお菓子いらないので食べちゃってください。」
「あぁ、ありがとうな」
なぜか顔が赤い恵は持ってきたお菓子を俺のほうに寄せてきた。
「あの、」
「どうした?」
「一つお願いがありまして…」
上目遣いで見上げてくる恵、我が妹ながら綺麗な顔をしている。
「仕事に差し支えなければでいいんですが、膝枕、してもらえないかなと」
「いいぞ、あまり寝心地良くないかもしれないが」
「そうですよね、そんなの邪魔に・・・。
っていいんですか⁉︎」
食い気味で飛びついてくる。まぁ膝枕くらい。しかも珍しくお願いしてくるもんだから兄として叶えてあげたいし
「それくらいならいいさ、妹の頼みだしな」
「ありがとうございます!」
そっと俺の膝に頭を乗せてきた恵、とりあえず早く仕事を終わらせて恵をベットで寝かせてやらないとな
それからは2人とも静かな時を過ごした。たまに下からの視線が気になり見るとこちらを見上げてくる恵と目があい顔を赤くして目をそらす、そんな繰り返しや寝返りがありつつも作業を続ける。
作業が終わり背伸びをしていると下から静かな寝息が聞こえてくる。
「こんな体制でよく寝られたな。」
俺の体に顔を押し付け眠る恵の姿がそこにはあった。
晴は優しく頭を撫で、そのまま自分も横になって目を閉じた。
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