第7話

 学校がはじまりました。

 学校がはじまれば後は簡単です。

 なるべく陰気に、なるべく卑屈に、なるべくどんくさくて、実際においも臭くて、ファッションもひどくて、それでいてどこか田舎者を見下しているような態度を取れば出来上がりです。

 どうやらこの学校には色々知っている邪魔者が多くてほとんどは無視してきましたが、一部の知らない者か、あるいは知っていてやってくる大バカ者があたしをいじめるのに時間はかかりませんでした。

「お前んちバケモン屋敷なんだってな」

 男の子たちが囃し立てます。あたしはすごく怖がっているふりをして、

「ちがうもん」

 とおどおど答えます。笑顔がキモイと蹴られました。でも、全然こんなのどうでもいいことなんです。

「ちがうもん、あたしの家は何もないもん」

 そうやって、何度蹴られても強情に主張するのです。するとまんまと

「バケモン屋敷に遊びに行ってやるよ」

 と言う者が現れます。

 大バカ者たちの中でも、やや賢い個体がじいちゃんにやめろって言われたから、などと言っています。でも、大バカ者の中の大バカ者であるこの男がにらみを利かせて黙らせたようです。

 あたしは、大バカ者に小突かれながら家を目指して歩きます。

 蟻、蟻、蟻の群れです。皆疲れている。楽にしてあげなきゃ。

 そう、家には■■■様ちゃんが待っているんです。

 大バカ者はあたしにドアを開けるように命令します。

 あたしは最後にもう一度言うのです。

「あたしの家にはなにもない」

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わたしのいえにはなにもない 芦花公園 @kinokoinusuki

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