霖雨の下にある人間とその辟易


 延々と続くもの、出口の見えないものを前にした時の、人間の無力さと足掻きの美しさが描かれている物語でした。

 雨という象徴的なモチーフが描かれていますが、それ以外にも「延々と続くもの」はこの物語で様々な形をもって人間の前に姿を現します。それに翻弄されながらも、大切なものだけはその手の中に守ろうとする人間に、無力さと美しさを見ました。

 この物語全編に横たわっているじめじめとした空気感もその辟易に説得力を出していたように感じました。じっくりと人間を描ききった、思考実験的なSFだったように思います。

 ところどころに光る、人間の本質を鋭い切り口で示す箴言も良いですね。人間という存在に通底するどうしようもなさ、それを軽蔑しながらも自分もどうしようもなく人間であること。そんな表現を目にするたびに、雨に濡れた地面のぬかるみのように足に纏わりつく感覚を覚えました。

 登場人物が雨の名前を冠しているのも良いですね。とてもずっしりと胸に残るお話でした。素敵な作品をありがとうございます。

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