滑らかに結ばれる「みっつ」

 描写が美しく、うっとりしながら読ませていただきました。
 ともすれば三題噺であることを忘れてしまいそうなくらいにナチュラルに編まれた文章が素敵でした。後日譚である『理由』の方も読ませていただきましたが、そちらも合わせて読むと、微熱の時のように少しだけ足元がふわふわしているような、そんな種類の浮遊感を感じます。
 それぞれのエピソードも、どこか水彩画を彷彿とさせる清涼感と儚さの噛みあった美しいものですね。主人公の目を通して見るあずささんの像が一貫しているためか、透き通った繊細さみたいなものが物語全体を覆っていたように見えました。
 お題の一つ、リトマス紙の使い方がとても綺麗だったように思います。レモンという果物を一度媒介することで、瑞々しさと妖艶さがうまく調和していました。
 とっても好みの文章でした。素敵なお話をありがとうございます。

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