三.

 サラリーマンは辛い。


 上司からパワハラとは言わずとも、それなりに手厳しいお叱りを受けたり、行きたくもない飲み会に連れて行かれた挙句、なりたくもなかった二日酔いに苦しんだり。それでも社会は止まることなく歯車を回し、僕は重たい体に鞭打って労働する。


 定時なんてとっくに過ぎた、夜十二時。机上に転がった三本のエナジードリンクの缶を見つめて、作業が終わった喜びを噛み締める。


 誰もいなくなったフロアに一人、このまま帰らずに会社で寝てやろうか。


 コツコツ。


 不意に女性ものの靴が奏でる、硬い音がした。


 すぐに誰の足音がわかる。


「そっちも今終わったところみたいだな。じゃあ帰るぞ、後輩」


「はい、先輩」


 しょうがない、あなたと一緒なら、めんどくさいけど帰ってやろう。


 僕は大きく伸びをして、立ち上がった。

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伸び 四百文寺 嘘築 @usotuki_suki

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