夢のはなし

うめ屋

令和二年

五月二十六日


 今朝見た夢。

 台湾らしきところに旅行する夢を見た。美術館併設の、ギャラリーショップのようなところにいる。壁は白亜にちかい静かな灰色。イメージとしては、直島(香川県)にある地中美術館のおもむき。

 天井は高く吹きぬけ、面の半分が硝子張りの天窓になっている。そこから、夏らしい明るい陽光が降りそそぐ。

 出入り口がある側の壁も硝子張りになっており、外に見える緑樹や道路、通りゆく車の雰囲気から、これは台湾だと思う。室内からでも匂いたつ、むっちりとした南国の空気。

 部屋の中には、黒い硝子製のデザイン棚がぽつぽつと置かれている。書院造の間にそなえつけられる違棚のように、互い違いとなった棚面が階段状におうとつをみせる。その棚のうえには、美術館らしい落ち着いた雑貨がいろいろと飾ってある。

 数人の客が、ゆっくりと棚のあいだを回遊する。それにならって足をめぐらし、掌サイズのタペストリーや、中華らしいキッチュな柄のポーチなどを手にとる。

 タペストリーは漢詩を絹の刺繍絵にしたもの。どれも古めかしい、すがれた茶色のつよい色あいで、そうの『桃鳩図』などを思い出す。絵の左上には漢詩そのものも縫いとりがされており、「杜甫」と読めた。たぶん五言律詩だった。

 ポーチも絹製。桃色と黒、しろとみどり、といった二色の組み合わせが、バランスよく配置されている。ポーチの腹の部分には吉祥紋の刺繍がある。どの雑貨もたいへん好みで、全部ほしい、と身もだえる。そこで目がさめた。

 いたく具体的な夢だったが、過去、台湾でこの夢のような場所には行っていない。……知らないだけで、実はかの国のどこかに存在するのだろうか?

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