海千山千
佐々木と猫田に飲み物を渡したのち、すぐに高橋さんは部屋に戻っていってしまった。
「高橋さん赤い顔してましたけど、何かあったんですか?」
「とくにはなかったよ?」
鈍感を装おう。とりあえず自分と高橋さんの関係は、今は秘匿にしておこう。
「んでも喉の乾いてい居た当人がいなくなるのは不自然じゃないか?お前自身になんの思い当たりがなくても、相手の琴線に触れてしまっているかもしれない。」
違うんだけどな・・・違う・・・よな?
「いやいや、女性が何も言わずに出て行ったのを追いかけるのは少々デリカシーにかけるんじゃないか?」
「んまあ・・・確かに・・」
「お前と喧嘩してても俺らと仲良くしてくれるといいな。仕事仲間との建設的な関係は維持する他はない。」
上手いこと持って行けた。少しだけ背徳感が残るな・・・しかし実のところ、高橋さんが顔を赤くしたのはなぜか分からない、自分のわからないところで(見落としたかもしれないが)佐々木の言うようなことが起きていたのかもしれないので、一応あとでメールで謝っておこう。(失礼な気もするが)
そして、男三人は少し早めの夜に、飲み物を飲み終わり、ベッドに突っ伏したのであった。
高橋さんにメールを送り忘れていたので、寝る前に忘れず送っておいた。〈いえいえ、特に怒ってなんていませんよ~ただちょっとだけ環山君に照れちゃっただけです。💦〉なんて返信された。ふと我に帰り、深めに布団をかぶる。
そのまま布団に魂を吸われるかのように僕は意識を手放した。
しょうもな♪しょうもな♪しょうもなぁい~♪人間~なんて~♪
そんなことを歌いながら、例の魚と邂逅した。
「夢の中まで侵入してくるなんて、お前死ぬほどいい性格してるな。」
「褒めてくれてありがとう、まだ契約は果たしてくれないのかい?」
「お前な、だいたいみんなの旅行で個人の営みをこなそうとするのは、人間というコミュニティ単位で生活する種族にとっては難しいんだぞ。」
自分の掌を眺める。少し蒼くなっている気もするがおそらくここが暗いからだろう。
「それもそうかもしれないな。」
少しの沈黙が走る。
「いやだがしかし、遂行してもらおう。」
「はぁ、ほんと困るぜ?」
「もとより日本人はそういうのをおおやけに・・・」
「あした。斑鳩の方に向かえ。」
確か明日は斑鳩に行く予定だったので、都合がいい。しかし・・・
「それで?何を企んでて俺に命令するんだ?」
「うるさいなぁ俺だっておなごといちゃいちゃしたいんだよ。」
「は?」
「お前はいいよなぁ、神からの勅命でいちゃいちゃすることを命じられているんだ、いちゃいちゃできない奴の気持ちなんて一切わからねぇだろうな。」
「俺に何を言いたいかはっきりしてくれないと対応に困るのだが・・・」
「もういい、今日はここまでだ。帰れ」
今までにないドスの効いた低い声で呟いていた。
「いや、俺の夢に紛れ込んできたのお前だろ?帰れって言ったけど俺の脳みそに居座るとか言い出すんじゃなかろうな?」
「うううううううるさい!!黙れっっつ!」
そうあいつが言い放った瞬間、急に引き込まれるような感覚に襲われ、また、それは先程の睡眠のような心地よさを感じさせてくれた。
盃に酒が入ってただけ あーとぶん @artbun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。盃に酒が入ってただけの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます