泡沫

流石に今すぐ淹れるというのは無理があるので、誰かさんに飲み物を買ってきてほししなぁ~とか思ってちらちら見ていたら。

「ん。なんですか?僕のこと見てても何も出ませんよ?」

「喉乾いたなぁ~。誰か買ってきてくれないかなぁ?」

目をそらすな目を。

「環山くん、買ってきてくれたら嬉しいかなぁ?」

「はぁ、そんなこと言って。素直にお願いしてくれればいいのに。」

「ありがとうねー。」

「あの二人、会話してるようでしてなかったな。」

「駆け引き・・・の様にも見えましたが。なんだあの人たち。」

「上司だよ。」

「怖いです。」

聞こえてるよ?お二人さん?わたし、レディよ?



「何か話したいことでも?」

「あーそうそう。環山君さ、何か悩み事があるように見えるんだけど、ない?」

見透かされてる。悩みというかなんというか、あの魚のことは実のところかなり気にかけている。当然だ、こんな年齢になっても慣れない、奇的過ぎる体験だったのだ。「特にないですよ。ただ漠然と得たものに浸っていたというかなんというか。」

「ん~環山くんさ、皆が何好きか知ってる?」

少し間の抜けたような声で反応してしまった。

「普段職場でコーヒーばっかり飲んでるおっさんとお兄さんの好みの清涼飲料水なんてわからないですよ。」

「環山君は?」

「王道の炭酸系が好きですよ。コーラとかサイダーとか。」

「ふ~ん。・・・」

何か小声で呟いていたが、聞き取ることができなかった。聞かせるつもりのないことに関して言及するのも失礼な気がするので、何も言わないでおこう。琴線だったら怖い。

「その辺を買っていこうか。値段覚えとこうね。」

はいと言って3本の炭酸飲料を渡してきた。妙に艶っぽい。

あの魚の言うような事態にはしたくないと改めて痛感した。

高橋さんはドアを開ける前、少し赤くなった顔をこちらに向けて、こちらに向かって”あかんべー”をしてきた。

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