ICE COFFEE
今日はまだ、新幹線に乗っていただけだが、非常に疲れた。
「うえへぇぇぇ。」
ベッドにダイブすると、鼻の頭がぶつかってほんのり痛かった。
だが、いつも通りのあどけない日常には必要なのかもしれないと思った。
お土産を見るとか言ったが、断じてそのようなことをするつもりはなかった。
「もはやおじさんだな・・・」
よく女性は性交をすると艶が増すというが、私の場合そんなことはあまり感じなかった。(そもそも化粧以外のタイミングであまり鏡を見ないので、気にしていなかったというのもある。)
今回猫田君がとってくれた2部屋のうち、私は女性という理由で1部屋まるまるもらったが、そこそこ広くて真っ白な部屋に一人となると、開放感よりも静寂さを感じてしまい、今夜眠れるか心配になった。
「夜は向こうの部屋で遊び疲れてから寝ようかな。」
暇が嫌いだった。
暇になると、すぐに無駄なことに思考をめぐらせてしまい、ある時は人を讃え、ある時は人を呪い、一喜一憂して過ごすという贅沢な時間のおくり方を思春期に覚えてしまい、所謂中二病だとされる特有の思考回路を捨てきれずに生きてきてしまったのだ。
それ故、生活には鬱々さが残り続け、体はしなやかさを失ってしまっていた。
しかし、これらは意外と簡単に忘れることができたのである。
私は読書が好きなのだ。特にちょっと渋い恋愛ものが。
そうして学生時代を送っているうちに大学は文学部に入学し、今では割と活かせている仕事に就いている。
そして、彼の存在もまた、時を忘れるには十分すぎる塔なのだった。
こうしてまた無駄に過去のことに思いを馳せている内に荷物セイルが終わってしまった。
「・・・コーヒー飲みにいこ。」
近くの観光客用と思われる位置の喫茶店に入り。柄にもなくアイスコーヒーを頼み、3分ほど待たされた後、壁際に設置されたカウンター席に座った。
びっくりするほどおいしいのである。
ここ最近は職場に行く度缶コーヒーを買っている気がしたので、家でコーヒーを淹れていこうかと悩んでいる。
「あの、このコーヒー豆って何ですか?」
店長らしきお爺さんに聞いてみる。
「これは言えないね。特製ブレンドなんだ。」
「・・・買ったりできますか。」
メニューにはないし、それらしきポップも見つからなかったので、ダメもとである。
「1袋250g1600円で提供させていただいております。」
高い。高いが、値段の割にはおいしいのでかうことにした。
「えっと、1袋お願いします。」
「わかりました。」
思いがけないところでお土産を買うことになったのである。
部屋に戻るとき、地下のお風呂エリアから男三人衆がさっぱりして帰ってきたのが見えたので、流れで部屋に入れさせてもらった。
「コーヒー豆・・・ですか。たしか賞味期限があったと思うので、結構飲む人向けですね。」
「すっごい飲むんだ私。」
「飲むのはいいと思うが、カフェイン中毒とかは大丈夫なんですか。」
佐々木君が敬語使ってる・・・ちょっと怖いとはいえ仕事をしている人間だ、珍しくはないのか。
「たぶんね。」
「高橋さん、ホワイトニングとかって、どこかの歯医者に通ってる感じですか?」
「定期健診と兼ねて、ね。」
飲み物の話してたら喉が渇いてきてしまった。
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