猫と猛禽と
金属とゴムが擦れる匂いがし、新幹線が我々の待ち侘びた場所へ送り届けてくれたことを理解した。
「奈良駅。到着しましたよ、佐々木さん。」
猫田がやさしく佐々木と高橋さんの方を揺らす。
俺は寝ている間、この魚のアクセサリーに悪夢を見せられたので、暫く猫田と談笑していた。
「お茶。飲み切ってくれましたね。」
「今後お前には優しくするよ。」
猫田が怖い。頭が切れてい過ぎる。怖い。絶対怒らせたくないこの子
「よし、降りるかぁー。」
子供の様に目をキラキラさせる
大きく息を吸って。新幹線から一歩踏み出した。
猫田を連れてきて本当に良かった。
駅からホテルへのタクシー手配、ホテルのチェックイン、夜のレストランの予約までしてくれたのだ。音速で。
「ほんと助かるわぁ~」
「いえいえ、皆さんが休むための旅行ですので。」
どうやら割と張り切っており、我々に気を配ってくれていたらしい。そういうものに限って、気づきにくいものだ。
あとで猫田のケアもしてあげないとな。
「じゃあ猫田のやってくれた予約の時間を考えて、18:25までにエントランスに集合だ。遅刻するときは連絡をくれ。」
「佐々木は遅刻しなさそうだもんな。」
猛禽類みたいにこちらを睨む。正直怖い。
「猫田、環山、ここには温泉があるらしい。一緒にどうだ。」
「いーですねぇ僕は行きたいです。先輩は?」
あの魚が俺に伝えたことを信じるか信じないかによって、大変なことになる。主に俺の存在が。
「ああ、俺も入ろう。あ、でも高橋さんは・・・」
「わたしは・・夜遅くに入ろうかな。おみやげ見た後に部屋でごろごろしてるから、みんなもあとで来てね。」
「あぁ」
うれしそうにはにかむ彼女だが、どこか寂しさが映っていた。
「男三人で風呂ってのも悪くないなぁ。」
「まぁ普通は入らない時間ですもんね。大浴場貸し切りですよ。」
「猫田と同じ洗顔剤使っててこの差はなんなんだ・・・」
真剣に考える。”なぜ猫田はこんなに美形なのか”
「DNAだな。」
「いいよなぁお前はお前で男らしくって。」
確かに俺はなかなか外見の特徴がない。ひょろひょろだ。
華奢な体格というのはまさしく猫田のことだろう。
佐々木は前々から肩幅が大きいと思ってたけどムキムキだとは思ってなかった。
「まぁ見えないところにでもあるんだろ。」
「・・・」
「先輩ってたしかすっごい量の本が家になかったでしたっけ。」
「今更だが先輩は二人いるから好きなように呼んでくれ。仕事じゃあるまい。」
「あれは実家だな。小さい頃から本が好きでな。たまに猫がおしっこひっかけてダメになってたけど。」
「ペットか、いいな。」
「興味持つとこズレてるな。」
「僕の実家お父さんがフクロウ飼ってましたよ。」
「え、なにそれ遊び行きたい。」
「今度の休暇ですかね。」
「そこの人も、言わなくてもわかってるからなって感じの目線で見ても、無駄ですからね。」
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