第5話 周りは体育祭の盛り上がりムードが漂っていて

6月に入り、周りは体育祭の準備に追われていた。俺が通う鳳高校は文武両道をモットーにしているため、体育祭の盛り上がりは凄まじい。


「もうすぐ体育祭かー」


「そうだねー。リレーの代表に選ばれたいな」


「凛なら選ばれるんじゃない?」


「晴彦と違って運動神経良いしね」


「うるせー」


 凛はいつも一言多い。昔はイラッとすることが多かったっが、最近は諦めて受け流すようになった。



「晴彦は何色だっけ?」


「緑。凛は?」


「私は赤。別々だね」


「そうだな」


「そうだ!勝った方は一つ言うことを聞くってのはどう?」


「乗った。個人戦じゃなければ勝てるかもしれないからな」


 ここで勝てば部下鵜の入部同期も口封じが出来る。この勝負は乗って絶対に勝つしかない。


「なるほどね。まぁ私も負けるつもりはないけど」


 俺は絶対勝てるように毎日お祈りする事にした。






「体育祭のリレー代表を決めまーす」


 六時間目の授業は体育祭の種目決めの時間だった。特にこの色別代表リレーは配点が高いため絶対落とせない種目だ。他の色には負けても良いからせめて赤団には勝たなきゃいけない。


「とりあえずこないだ体育で測った50m走だと筒井と須藤が速かったから出て欲しいんだけど」


「俺は出ても良いよ」


 よしっ。龍馬は出てくれる。


「俺はパス。リレーとかだるい」


 なんでだよ!出ろよ!


 俺は前に座っている海斗に頼む。


「海斗頼む!出てくれ!」


「あっ?なんでだよ」


「出てくれないと負けるかもしれないんだぞ!海斗は負けてもいいのかよ」


 海斗は根っからの負けず嫌いだ。ボクシング部でも絶対に倒れない男として評判らしい。


「確かに負けるのは許せねーな。体育委員!やっぱり俺出るわ」


 ほっと胸を撫で下ろす。とりあえずこれで緑団の一番速い人が出てくれる事になった。


「晴彦が負けず嫌いなんて意外だな」


「俺はいつもこんな感じだよ」


 嘘だ。凛とあんな賭けをしなきゃリレーなんてどうでも良かった。




 放課後になり世良さんと部室に行くと体育祭の話で盛り上がっていた。


「おう時枝、雫。うちリレーの代表になったぞ」


 そう話してくれたのは褐色肌でいかにもスポーツしてましたって感じの深瀬舞先輩。入部したときは風邪で学校を休んでいたが、復帰してからはよく話しかけてくれて、面倒を見てくれる姉御肌な先輩だ。とりあえずまともな先輩でよかった。


「うわー!すごいですね!おめでとうございます」


「おめでとうございます」


「イッヒッヒ。ありがとう」


 部長が言うには深瀬先輩は行事ごとになるとすごく張り切るらしい。だからリレーの代表もうれしいのだろう。


「そういえば晴彦と雫はうちと同じ緑団だろ?あんた達の学年のリレー代表は速いのか?」


「男子は速いですね。女子は……」


 女子については知らないので、隣にいる世良さんに助けを求める。


「正直そんな速くないです」


「マジかー。まぁしょうがないな」


 マジかー。深瀬先輩。マジで頑張ってください。


「深瀬先輩の学年は男子も女子も速いんですか?」


「みんな速いよ。男子は2人とも陸上部の短距離だし」


 最高です。これは勝ったかもしれない。


「三年生はどうなんですかね?」


「三年はわからないなー。部長も青団だしうちも三年生の知り合いいないしなー」


 まぁそうだろう。他の学年とは部活が一緒だったり、中学の時から仲良くなければそんなに話す機会はない。


「青団のリレー代表は速いんですか?」


 俺は部長に問いかける。ここが重要だ。他の団が速くても俺には全く興味がない。


「私たちのところも速いよ。みんな体育祭で優勝するって意気込んでるからね」


「あー。そうなんですか」


 やばいかもしれない。頼む。青団にだけは勝ってくれ! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

陰キャの俺は惚れられた女にしか告白できない 村人マット @murabitom114

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ